定年退職をきっかけに「熟年離婚」。離婚後の年金はどうなる?
ファイナンシャルフィールド / 2021年7月24日 11時0分
離婚件数の年次推移を見ると、平成14年には29万組でピークとなり、平成15以降は減少に転じ、20年は25万1000組となっています。 そういったなかで、定年退職をきっかけに離婚する、いわゆる「熟年離婚」をする方がいらっしゃいます。では、熟年離婚した場合に、財産はどうなるのでしょうか? 結論としては、長年連れ添った夫婦の財産は、婚姻期間中に夫婦が協力して築き上げたものについては共有財産とみなされ、名義によらず原則50:50で、公平に分配されます(婚姻以前の財産や相続によって得た財産は、それぞれの名義人のものになります)。 これを「財産分与」といいます。年金についても、将来の財産を公平に分配する「年金分割」という制度があります。今回は、この年金分割とはなにか、その手続きはどうしたらよいか詳しく見ていきましょう。
年金分割とは?
年金分割とは、離婚した場合に2人の婚姻期間中の厚生年金を分割して、それぞれ自分の年金とすることができる制度です。分割方法には、「合意分割」と「3号分割」の2種類がありますので、それぞれの内容について見ていきましょう。
なお、この制度は、自営業やフリーランスなどの方が加入している国民年金は対象にはなりませんので注意をしてください。
<合意分割>
合意分割制度は、次の(1)~(3)の条件すべてに該当した場合に、2人からの請求により厚生年金(共済組合の組合員である期間を含みます)の保険料納付記録(標準報酬)を分割できる制度です。
この制度により分割される記録は、婚姻期間中の2人の保険料納付記録に限られます。
(1)平成19年4月1日以後に離婚している、または事実婚関係を解消(※1)している
(2)2人の合意や裁判手続きにより年金分割の割合を定めているが、分割を受けることによって、増額される側の分割後の持ち分割合は50%以下という制約がある
(3)請求期限(離婚をした日の翌日から2年)(※2)を経過していない
<3号分割>
3号分割制度は、次の(1)~(3)の条件すべてに該当した場合に、国民年金第3号被保険者(※3)であった方からの請求により、相手方の保険料納付記録を2分の1ずつ分割できる制度です。
この制度により分割される記録は、平成20年4月1日以後の国民年金第3号被保険者期間中の記録に限られます。
(1)平成20年5月1日以後に離婚している、または事実婚関係を解消している
(2)平成20年4月1日以後に、2人の一方に国民年金の第3号被保険者期間がある
(3)請求期限(離婚をした日の翌日から2年)を経過していない
(参考・引用・抜粋:日本年金機構「離婚時の年金分割について」(※4))
年金分割の申請方法
お近くの年金事務所へ行って、以下の流れで年金の案分割合を決めます。
(1)情報通知書の請求手続き
この手続きは、離婚の前でも後でも行うことができます。
(2)「年金分割のための情報通知書」の受け取り
(3)話し合いによる合意
ただし、3号分割のみ請求する場合は、2人の合意は必要がなく、第3号被保険者であった方からの手続きによって年金分割が認められますので、(6)へ進みます
(4)合意できた時は(6)へ進む
(5)合意できないときは、家庭裁判所への審判または調停を申し立てます
(6)年金分割の請求手続きを行います
この請求手続きは、離婚をした後に行うことができます。
(7)「標準報酬改定通知書」の受け取ります
案分割合に基づき、厚生年金の標準報酬を改定し、改定後の標準報酬を日本年金機構からそれぞれに通知がきます。なお、共済加入期間を有する場合には共済組合等からも通知が届きます。
(参考・引用・抜粋:日本年金機構「離婚時の年金分割について」(※4))
詳細の手続きについては、お近くの年金事務所もしくは年金相談センターに相談をしてみるとよいでしょう。
(※1)事実婚関係にあった間に、2人の一方が国民年金の第3号被保険者であった場合に限られます。
(※2)分割請求期限の特例あり。詳細については、日本年金機構ホームページをご覧いただくか、お近くの年金事務所に確認するとよいでしょう。
(※3)国民年金第3号被保険者とは、厚生年金保険の被保険者、共済組合の組合員の被扶養配偶者で、20歳以上60歳未満の人をいいます。
(※4)日本年金機構「離婚時の年金分割について」
出典
厚生労働省「離婚件数」
日本年金機構「離婚時の年金分割について」
執筆者:堀江佳久
ファイナンシャル・プランナー
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