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老齢年金の繰上げ請求をした方がいい人、しない方がいい人

ファイナンシャルフィールド / 2021年11月25日 23時10分

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年金の受け取りを繰り上げ請求するべきかどうかというのは、悩ましい問題です。   「繰り上げ請求をすれば年金を早く受け取れる」 「繰り上げ請求をすると受け取れる年金額は減ってしまう」   この問題に対する答えは、正直なところ、その人の考え方によるところが大きいです。ですから、本記事において「○○な人は繰り上げ請求をした方がいい!」あるいは「繰り上げ請求をしない方がいい!」とは断言していませんので、あらかじめご了承ください。   しかし、そうはいっても何かしらの判断基準は欲しいところだとは思いますので、押さえるべきポイントを解説していきます。

繰り上げ請求の注意事項をチェックする

日本年金機構では、「老齢年金の繰上げ請求についてのご確認」という書類(チェックシート)を用意していますので、その内容をご紹介します。
 

(1)繰り上げする期間に応じた減額率により年金額が減額され、減額率は生涯にわたる

繰り上げ請求をすると、0.5%に繰り上げ請求月から65歳に達する日の前月までの月数を乗じた率(減額率)に応じて年金額が減額されます。
 
例えば、1年繰り上げ請求をした場合、減額率は6%(=0.5%×12ヶ月)となり、その分だけ年金額が減額されます。言い換えれば、受け取ることができるのは本来額の94%(100%-6%)ということです。減額率が生涯にわたるという点も見逃すことはできません。
 
また、厚生年金基金に加入されている方は、そちらの年金についても減額される場合がありますので、厚生年金基金にご確認された方がよいでしょう。
 

(2)国民年金の任意加入や保険料の追納はできなくなる

国民年金(老齢基礎年金)は、40年間保険料を納付しないと満額受け取ることができません。老齢基礎年金を満額受け取るために、人によっては国民年金の任意加入や保険料の追納をする必要があるかもしれませんが、繰り上げ請求をした場合には、それらができなくなりますので注意が必要です。
 

(3)他の年金と併せて受給することができない

繰り上げ請求をした場合、65 歳になるまでの間は遺族厚生年金や遺族共済年金などの他の年金と併せて受給することはできません。いずれかの年金を選択し、受給することになります。
 
国民年金の寡婦年金も受給することはできません。寡婦年金を受給している場合、その権利を失うことになります。
 
障害基礎年金(または障害厚生年金)を請求することもできなくなりますので、治療中の病気や持病がある方は、特に注意が必要です。
 

受給額が逆転するとき

老齢年金の繰り上げ請求をすることの利点は、早く年金を受け取れるという点にあります。繰り上げ請求をした場合、その期間に応じて年金額が減額されるというのは先に解説したとおりですが、あなたの関心事は「受給総額はいつ逆転するのか」ということではないでしょうか。
 
この点について考察すると、以下のとおりとなります。数学が苦手な方は読み飛ばしていただいても構いません。

<設定>

●65歳で受け取れる予定の年金額:A円
●繰り上げ期間:x年(0<x<5)
●65歳以降の受給期間:y年

※経過的な繰り上げ支給については考慮しない

<計算式>

●y年繰り上げ請求をしたときの年金受給額:
(1-0.5%×12ヶ月× x年)× A円×( x年+ y年)
●原則どおり65歳からの年金受給額:A円×y年
●y年繰り上げ請求をしたときの年金受給額と原則どおり65歳からの年金受給額が同額になるのは、
(1-0.5%×12ヶ月× x年)× A円×( x年+ y年)=A円×y年
のときである。この式を展開して整理すると、以下のようになる。

 
y=50/3-x
 
「50/3」は分数で、「3分の50」のことです。

この式の意味するところは、「繰り上げ請求したときと繰り上げ請求をしなかったときで、受給額が同じになるのはいつか?」ということです。
 
最後の「y=50/3-x」は、「x年繰り上げ請求した場合、65歳からy年後(50/3からx年を引いた年数)に、繰り上げ請求をしなかったときの受給総額と同じになる(逆転する)」という意味です。
 
なお、50/3は16より大きく17より小さい数字です。この計算をするときは、16を用いても構いません。
 
例えば、3年繰り上げ請求をしたとします(62歳に受給開始)。その場合、xに3を入れます。すると、yは13より大きく14より小さい数字となります。yは65歳以後の受給期間となりますので、65歳に13を加えると78歳になります。つまり、3年繰り上げ請求をした場合、およそ78歳から79歳までの間に受給総額が逆転するということになります。
 

まとめ

繰り上げ請求をすることによって、恩恵を受ける人もいれば、恩恵を受けられない人もいます。
 
例えば、繰り上げ請求をすると年金額は減額しますが、60歳で定年退職をされ、65歳で年金を受け取るまでの間に家計がひっ迫してしまうような場合は、繰り上げ請求をした方が良いかもしれません。
 
繰り上げ請求をすると他の年金と同時に受給することはできず、いずれか1つを選択しなければならない場合、繰り上げ請求をしない方が良い場合もあるかもしれません。
 
どのようにしたら良いかは一概にはいえませんので、ご自身の場合がどうであるかについては、本記事を参考にご自身でご判断されるか、別途FPなどにご相談されるのがよろしいのではないかと思います。
 
出典
日本年金機構 「老齢年金の繰上げ請求についてのご確認」
日本年金機構 「繰上げ請求の注意点」
日本年金機構 「老齢基礎年金の繰上げ受給」
日本年金機構 「老齢厚生年金の繰上げ受給」
 
執筆者:中村将士
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー

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