2020年までには施行される相続法改正で保護される配偶者の居住権利とは?
ファイナンシャルフィールド / 2018年9月12日 8時30分
2018年7月に民法の相続に関する規定(相続法)が大幅に改正されました。相続法が大きく変わるのは、1980年の大改正以来38年ぶりとなります。 今回の改正では、高齢化社会の進展によって残された配偶者の生活への配慮が必要になるなど、相続を取り巻く環境の変化がみられることから、配偶者の居住権を保護するための方策が盛り込まれています。この方策の施行期日は、改正相続法の公布の日である2018年7月13日から2年を超えない範囲内とされていることから、2020年7月12日までに施行されることになっています。
配偶者の居住の保護はなぜ必要なのか
相続人と相続分の割合は民法で定められており、相続人が配偶者と子の場合、法定相続分は配偶者2分の1、子2分の1となります。このため、被相続人(亡くなった人)が所有していた住居は、原則として配偶者と子で半分ずつ分けることになります。
しかし、現実問題として、住居を分けることは困難な場合が多く、建物を共有名義にしても解決できるとは限りません。特に高齢者が再婚して配偶者と前配偶者の子どもとの折り合いが悪いなどの場合には、そもそも同居することが難しく、他の遺産が少なければ高齢の配偶者は住居を失うおそれがあります。
そうなると、他に住居を確保して新たな環境に対応していかなければならず、高齢の配偶者にとっては生活面や経済面で厳しい状況に置かれることになってしまいます。
そこで、改正相続法では残された配偶者が居住している住居を確保できるように、相続開始に伴う配偶者の居住権が創設されました。配偶者の居住権には、配偶者の居住を長期間保護するための「配偶者居住権」と、遺産分割が終了するまでの間保護するための「配偶者短期居住権」の2つがあります。
配偶者居住権とは
配偶者居住権とは、配偶者が相続開始のときに居住していた被相続人所有の建物を対象として、終身または一定期間、配偶者がその建物を使用できる権利のことです。遺産分割等における選択肢の1つとして、配偶者に居住権を取得させることができることとするほか、被相続人が遺贈(遺言によって財産を贈与すること)等によって、配偶者に配偶者居住権を取得させることが可能になるものです。
配偶者居住権によって、相続の際、居住建物が他の相続人や第三者に渡ったとしても、配偶者が居住を続けることができます。
ただし、不動産を取引する人が配偶者居住権の付いた建物かどうかがわかるように、建物の所有者は、配偶者居住権を取得した配偶者に対し、配偶者居住権設定の登記を備えさせる義務を負うものとされています。登記を備えることで居住建物の転売によって取得した第三者にも対抗することができます。
なお、配偶者居住権の価値をどのように評価するかは、まだ定まっていませんが、生前に相続対策を検討する際には今後の動向に留意しておく必要があります。
配偶者短期居住権とは
配偶者短期居住権とは、配偶者が相続開始のときに遺産に属する建物に居住していた場合には、遺産分割により居住建物の帰属が確定した日または相続開始のときから6ヶ月を経過する日のいずれか遅い日までの間、無償でその居住建物を使用することができる権利です。
つまり、被相続人が所有していた建物に無償で居住していた配偶者に対して、最低でも6ヶ月間は金銭を支払うことなく住み続けられることを認めるものです。
また、配偶者が相続を放棄した場合や遺贈等があった場合などに、配偶者以外の第三者がその居住建物の所有権を取得し、配偶者短期居住権の消滅を申し入れることはできますが、配偶者はその申し入れを受けた日から6ヶ月間は引き続き無償で居住を続けることができます。
このように配偶者居住権と配偶者短期居住権は、家族形態が多様化している現代社会において、相続開始時に残された配偶者が居住している住居を確保する必要性が高くなったことから、法的に保護するために設けられたものです。この法改正が施行されると、遺産の分け方も変わってくるかもしれません。
Text:FINANCIAL FIELD編集部
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