1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. 経済

お父さん、ありがとう…年金月7万円の66歳女性「遺族年金額」に絶望も、亡き夫からの“プレゼント”に涙【FPが解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年4月29日 11時15分

写真

(※写真はイメージです/PIXTA)

歳を重ねるにつれて、自らの老後だけでなく、自分が亡くなった後の家族が生活に困らないための対策も必要になってきます。最愛の夫を亡くしたAさん(66歳)は、遺族年金額の「あまりの少なさ」に絶望しましたが、亡き夫からの「最期のプレゼント」に思わず涙しました……。ファイナンシャルプランナーの石川亜希子氏が、事例をもとに解説します。

これからどうすれば…最愛の夫を亡くしたAさんの絶望

専業主婦のAさん(66歳)は、3歳年上の自営業の夫Bさんと二人暮らしです。夫婦仲はとてもよく、これまでも国内外を問わずいろいろな場所を旅してきました。

しかし、悲劇は突然訪れるものです。ある日、友人とお茶を楽しんだAさんが帰宅したところ、ダイニングで倒れている夫を発見。すぐに救急車を呼びましたが、Bさんは70歳を目前に亡くなってしまいました。

Aさんは、長年専業主婦として家族を支えていたため、支給される年金額は月に約7万円のみ。財産と呼べるものは、生前夫が贈与だといって毎年50万円ずつ振り込んでくれていた預金500万円と自宅、それに夫名義の預金口座にある300万円です。

「これからどうやって生きていけばいいの……」Aさんは不安で胸が締めつけられてしまいました。

「遺族年金」は、誰でももらえるわけではない

「遺族年金」は、被保険者が亡くなったときに、その配偶者や子どもなど、被保険者によって生計を維持されていた遺族に支給されるものです。老齢年金と同じように“2階建て”の仕組みになっており、1階部分が「遺族基礎年金」、2階部分が「遺族厚生年金」となっています。

1階部分の「遺族基礎年金」は、被保険者に生計を維持されていた「子のある配偶者」や「子」に対して支払われます。ただし「子」については、18歳の誕生日以後最初に迎える3月31日までの年齢でないと支給の対象にはなりません。

Aさんには息子が2人いますが、それぞれすでに成人して家庭を持っているため、残念ながらAさんには遺族基礎年金の受給資格がありませんでした。

一方、2階部分の「遺族厚生年金」は、会社員や公務員など厚生年金に加入している被保険者が死亡した場合に支給されます。なお、受給額は死亡した方の老齢厚生年金(報酬比例部分)の4分の3です。

Bさんは会社勤めの期間もありましたが、途中から自営業として独立したため老齢厚生年金額は少なく、その4分の3となると月にわずか1万5,000円ほどとなります。

さらに、「65歳以上で遺族厚生年金と老齢厚生年金を受給する権利がある場合、老齢厚生年金は全額支給、遺族厚生年金は老齢厚生年金に相当する額の支給が停止となる」というルールがあります。そのため、66歳のAさんは、最終的に差額の約1万円ほどしか受け取れません

遺族年金とは名ばかりで、生活の足しにするにはあまりにも少ない金額に愕然。途方に暮れたAさんは、藁にもすがる思いで長男に電話をかけました。「お母さん、もう生きていけないかもしれない……」

すると長男から、意外な返答が。

「大丈夫。父さんは『俺がいなくなっても母さんが安心して暮らせるように』って、いろいろ対策していたみたいだから」

亡き夫がAさんに遺していた「3つのプレゼント」

「えっ、どういうこと?」

「うん。3つあるんだけどね」

そういうと、長男は下記のように説明をはじめました。

1.暦年贈与

「母さん、父さんから毎年50万円ずつ受け取っていたでしょ。それは『暦年贈与』というしくみを使って、税金がかからないようにしてくれていたんだよ」

「暦年贈与」とは、1月1日から12月31日までの1年間(暦年)で、贈与額を110万円以下とすれば贈与税がかからないというものです。非課税で毎年お金を移せることから、有効な相続税対策として知られています。

夫のBさんに言われるがまま、毎年受け取っていた50万円にそんな意味があったのかと、Aさんは驚きました。

2.生命保険

「あと、父さんが入ってくれていた生命保険金も、母さんが受けとれるはず」

Bさんは生命保険に加入していたため、Aさんは死亡保険金の受取人として、1,000万円を受け取ることができます。

なお、保険金の受取人が誰かによって所得税、相続税、贈与税のいずれかの課税対象になりますが、今回のように、被保険者と保険料の負担者が夫Bさん、受取人が妻Aさんの場合は上記のうち「相続税」の対象です。

しかし、Aさんは法定相続人であるため、500万円×法定相続人の人数分は非課税となります。これは、死亡保険金には「残された家族の生活保障」という意味合いもあるためです。

夫が、Aさんの手元になるべく多くの財産を残す方法をきちんと調べていたことを知り、Aさんは夫の思いに感謝するとともに、亡き夫の愛情に思わず涙しました。

3.配偶者居住権

「あとね、いまの母さんには、「配偶者居住権」っていうのがあるよ」

「配偶者居住権……? なに、それ?」

「配偶者居住権」とは、2020年に新しく民法で認められるようになった権利です。それまでは、たとえば配偶者と子どもで2分の1ずつ遺産分割を行う場合、“2分の1”にするために自宅の売却を行って現金化するなど、配偶者が住み慣れた自宅を手放さなければならないケースも少なくありませんでした。

しかし、「配偶者居住権」ができたことで、不動産を“居住する権利(配偶者居住権)”と“所有する権利”が分割され、配偶者は自宅を手放さずに遺産を分割できるようになったのです。

「でもそれだと、あなたたちのほうが不利ってことにならない?」

「ううん、平等だよ。それに、遺言書に父さんがそう書いていたから、遺言書どおりにしよう。父さんと母さんが苦労して俺たちを大学まで行かしてくれたこともわかっているし、それに俺たち子どもも、しっかり父さんからのプレゼントをもらっているから」

Bさんは、「教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置」を利用して、孫への教育資金として息子たちにもまとまった金額を贈与していました。この贈与は、暦年贈与と併用することができます。

「私だけでなく、子どもたちや孫のことまでしっかり考えていたなんて……」

Aさんは電話を切ったあと、涙でにじんだ空を見上げながらつぶやきました。

「『難しい話はおまえにはわからないから』ってなにも話してくれなかったけど、直接お礼を言いたかったな。……お父さん、ありがとう。最期のプレゼント、大切に使わせていただきます」

「まだ元気だから大丈夫」ではなく、元気だからこそ“万が一の事態”への備えを

Bさんのように、自分が亡くなったあと家族が生活に困らないよう、生前に準備をしておくことはとても大切です。

しかし、今回見てきた事例はあくまで一例です。生前贈与や保険金の受け取りにおいてはさまざまな要件があり、それぞれの事情によって当てはまる場合と当てはまらない場合があります。

さらに、法改正などにより制度もどんどん変わっています。したがって、最新の制度についても可能な範囲でチェックしながら、もし自分だけでは難しいというときは、専門家に相談のうえ検討するといいでしょう。

石川 亜希子 AFP

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください