改正された「相続時精算課税制度」を活用しよう! <その1> 基礎控除額110万円活用のメリット
ファイナンシャルフィールド / 2024年4月21日 2時30分
相続時精算課税制度は、2024年1月1日から改正されました。今までは「受贈者(納税者)にとってメリットがない」「使い勝手が悪い」と課題の多かった制度ですが、改正された制度(「新相続時精算課税制度」と呼びます)は、旧制度と比べて贈与をスムーズに行いやすくなり、受贈者にもより高い節税効果があり、贈与者・受贈者ともにメリットのある制度になっています。 本記事では、そのメリットについて説明したいと思います。
従来までの相続時精算課税制度とは?
贈与税が非課税となる制度には、暦年贈与による年110万円の非課税枠と、相続時精算課税制度による2500万円までの非課税枠(特別控除という)があります。
「相続時精算課税制度」とは、60歳以上の父母または祖父母などが健在の間に、18歳以上の子や孫などに非課税のまま財産を贈与して、相続時にまとめて相続税を支払うことにより、税金の支払いを完了する制度です。2500万円の特別控除があるため、まとまった資金を早期に、かつ、当面非課税(2500万円を超える部分には20%の贈与税がかかる)で、子や孫に生前贈与できるメリットがあります。
ただし、相続時には特別控除された2500万円分の贈与財産にも相続税が課税されるので(支払った贈与税は還付される)、免税ではなく「課税の繰り延べ」という性格の制度です。
改正前は、「一度相続時精算課税制度を選択したら撤回ができず、二度と暦年贈与の非課税枠は使えない」というデメリットがあり、この制度は使う人も少ないままでした。
相続時精算課税制度とそのメリット
2023年(令和5年)の税制改正により、相続時精算課税制度は改正され、2024年1月1日から施行されました。その結果、この制度は贈与者・受贈者双方にとってメリットのある制度になりました。
具体的にいうと、「この制度を一度選択したら暦年贈与は選べない」という点は変わりませんが、2500万円の特別控除に加え、毎年110万円までの贈与(「基礎控除」という)が非課税で行えるようになりました。
すなわち、ある年に子へ一定額の贈与を行った場合、贈与税の課税価格から基礎控除110万円を引くことができ、これは永続的に課税されなくなります。
例えば、相続時精算課税制度を選択して60歳以上の父から18歳以上の長男に贈与するケースを考えてみましょう。図表1に示すとおり、2024年に300万円、2025年に500万円、2026年に400万円の贈与を行った場合(他の贈与者からの相続時精算課税制度を利用した贈与はないものとする)、毎年110万円の基礎控除を受けることができます。
図表1
2024年 | 2025年 | 2026年 | 計 | ||
---|---|---|---|---|---|
贈与額 | 300万円 | 500万円 | 400万円 | 1200万円 | |
基礎控除 | 110万円 | 110万円 | 110万円 | 330万円 | 非課税 |
特別控除 | 190万円 | 390万円 | 290万円 | 870万円 | 受け取り時は非課税だが、相続時に他の相続財産に加えて、課税の対象とする。 |
筆者作成
暦年贈与の非課税枠は、相続時精算課税制度の基礎控除額とは別に110万円あります。しかし、2024年からは生前贈与の対象期間が3年から7年に延びるので、課税されるリスクが高まります。
これに対し、相続時精算課税制度の基礎控除は、相続時に課税される可能性がなく、無条件で非課税となります。したがって、生前贈与時は新相続時精算課税制度を選択して無条件で基礎控除額の適用を受ければ、暦年贈与のように、相続時に課税されるリスクはなくなります。
基礎控除は、相続時まで毎年使うことができます。相続時精算課税制度を選択してから相続まで10年あるとすると、受贈者1人当たり最大1100万円、20年あるとすると最大2200万円を、非課税で受け取れることになります。
これが改正後の相続時精算課税制度を選択する大きなメリットです。
まとめ
本記事では相続時精算課税制度改正によるメリットとして、生前贈与加算の影響を受けずに毎年110万円の基礎控除額を使え、相続時まで非課税枠が確保できることを説明しました。
<その2>では、改正後の制度における基礎控除のメリットをさらに掘り下げ、それ以外のメリットや注意点について述べていきたいと思います。
出典
国税庁 No.4103 相続時精算課税の選択
国税庁 令和5年度相続税及び贈与税の税制改正のあらまし
執筆者:浦上登
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー
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