相続した実家がなかなか売れない2つのケースと事前にやっておきたいこと
ファイナンシャルフィールド / 2019年2月19日 9時0分
空き家が社会問題となっていますが、日本の空き家は約820万戸、空き家率は13.5%に達しており、今後さらに増えることが予測されています。(※1) 総務省の統計上、空き家は「賃貸用の空き家」「売却用の空き家」「二次的住宅の空き家」「その他の空き家」に分類されていますが、そのうちの約318万戸が、「その他の空き家」です。その他の空き家には、「実家の空き家」などが含まれます。 「実家の空き家」を相続した人が、その空き家を売却しようとしたときに、さまざまな理由で売却できないことがあります。なぜ売れないのか、また、そうならないためにはどのような点に注意すればよいのでしょうか。
いざというときに実家が売れない!
実家を相続した人の中には、住む予定も活用する予定もないため、売却しようとする人が多くいます。ところが、いざ売却しようとすると、今まで知らなかった、あるいは気にしていなかったことが原因で売れないことがあります。
売れないいくつかの理由のうち、2つのケースについて解説します。
ケース1 境界が確定しない
土地を売却する際に、売主が隣地の所有者と取り交わした境界確認書を、買主に交付することが一般に行われています。土地の境界が分からないと、どこまでの範囲が売買の対象なのか明確にできないため、買主も不安だからです。
ところが、隣地の所有者と境界についての主張が異なり、境界確認書が取り交わせないケースがときどきあります。そうなると、買主が承諾しないかぎり、土地を売却することはできません。
境界問題で揉めてしまうと、お互いの主張を譲らず、解決するまでに長い時間がかかることもあります。隣地所有者との人間関係も悪化し、さらに解決が遠くなります。
このようなトラブルを解決するために、筆界特定という制度があります。これは、土地の境界を決めてほしい土地所有者が法務局に申請し、担当の登記官が現地調査や外部の専門家の意見をもとに、境界を特定してくれるという制度です。
平成18年に始まりました。制度が始まって以来、年間2000件以上の申請件数があるのを見ると、世の中に境界トラブルがいかに多いかということが推測されます。(※2)
ただし、筆界特定には費用もかかり、特定までの期間も1年近くかかることもあります。筆界特定以外に境界確定訴訟によって境界を確定する方法もありますが、さらに多くの時間と費用を費やすことになります。
このように、境界問題は、一度トラブルになると長い時間と多くの費用がかかることになります。しかも代が替わるにつれ、近隣関係が疎遠になることが多く、解決がより困難になります。境界トラブルは、親の代のうちに解決するように早めに動き始めることが大切です。
ケース2 相続登記ができていない。
筆者が土地活用の相談者から聞いた話です。
その相談者は実家を相続し、現在も住んでいますが、自宅の敷地がかなり広いため敷地の一部を売却することになりました。
自宅の土地建物が祖父の名義のままになっていたため相続登記をしようとしたところ、(法定)相続人がなんと35人もいることが分かりました。Aさんの父には多くの兄弟姉妹がおり、その中には亡くなっている人も多く、その子どもたちも相続人となるので、結果的に相続人が著しく増えていたそうです。
結局、相続登記が完了するのに21年の歳月がかかりました。加えてハンコ代(遺産分割協議書に署名捺印してもらう御礼)や弁護士費用などで、数百万円の費用もかかったとのことでした。
相続登記を怠ったために、明日にでも売りたい土地が売れたのが、なんと21年後だったという笑えない話です。この事例は極端かもしれませんが、相続登記は相続後に速やかに行わないと、時間の経過により相続人の数が増え、より難しくなる場合があります。
また、相続人の中には行方不明になっていたり、海外に居住していたりするケースもあり、相続手続はますます大変になります。最悪の場合相続トラブルになることさえあります。相続の際には速やかに相続登記をすることが、のちのち不要な費用もかからないベストな方法と言えます。
このように、不動産の問題点は相続発生前から早めに調査し、売れない理由がある場合にはこれを解決しておくことが、不動産をスムーズに売却できることにつながります。
出典
※1総務省「平成25年住宅・土地統計調査」
※2総務省統計局「政府統計の総合窓口・法務局及び地方法務局管内別 筆界特定事件の受理、既済及び未済件数」
執筆者:橋本秋人(はしもと あきと)
FP、不動産コンサルタント
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