夫と離婚予定だけど、財産は自宅であるタワーマンションのみ。財産分与はどうすればいい?
ファイナンシャルフィールド / 2020年5月11日 10時15分
【ご相談内容】 45歳の同級生の夫と離婚を決めました。数年前にタワーマンションを購入、預貯金はすべてそちらに使ってしまいました。 夫はこだわりのあるこのマンションを手放したくない模様。給与はそこそこあるのですが、分ける財産はほぼありません。しかし、財産分与してもらわないと、私は気がすみません。
共稼ぎ夫婦にみられる住まいのセレブ化
近年、都心部を中心にマンションの高級化が進んでいます。ブランドマンションに住むと、まるで若い時に見た「トレンディドラマ」の主人公になった気分になれるかもしれません。ブランドマンションは、今でも人気が高いようです。
確かに、部屋のデザイン、機能性、付加サービス等……また、老後を考えたバリアフリーの室内は、一般のマンションと比べたら大違い。
しかし、こういった物件は高級なことが多いですから、誰でも購入できるわけではありません。とはいえ、最近では『共働き』が増えたので、世帯当たりの収入がアップし、購入できる層がかなり広がりました。
今回のご夫妻もこのパターン。夫900万円、妻700万円、夫婦合算で1600万円の収入があります。マンションは高層階になるほど、同じ間取りでも価格はアップします。
内装も高層階の方がハイグレードになることが多く、ホテルライクな雰囲気を味わえるようです。ストレスフルな現代に、毎日ホテルライクな生活を送れることは、大きな満足感に浸れることでしょう。
このご夫妻も10年前に、合算で8000万円代の3LDKを購入しました。また、購入前5年間に両家の親が亡くなり、まとまった相続金が入ってきました。そのおかげで、相続金を頭金に使ったので、グレードの良い物件を手に入れることができたようです。
マンションを購入するまでは、夫婦同じ目標があり、仲が良かったそうです。休日のたびに内覧へ行ったり、ファニチャーショップへ足を運んだりする住活が、夫婦のコミュニケーションとなっていたそうです。
不動産しかない「財産分与」の問題
入居後3年ほどは幸せだったとか。しかし、管理費・修繕費を含めた住居費が高く、また、このようなご家庭の場合は生活全般がブランド化しがちです。子どもの塾や習い事、日常の生活費、身の回りの品々。もはや、ラグジュアリーのスリム化は困難な状態になりました。
共働きの夫婦は、どうしても妻の負担が大きくなりがちです。上記のように、ご夫婦の生活がブランド化したという理由から、妻は仕事を継続しているので、日常生活が大変になってきたそうです。
フルタイム勤務に子どもの世話、ペットもいます。休日は子どもの習い事につき合い、自分の趣味も楽しむ。そして家事をこなすのですから、スーパーウーマンです。
しかしながら、こんな生活は長く続くわけがありません。妻のストレスは日に日に増えてしまったのです。
そして、夫婦はけんかが日常化。夫の最大の不満は「料理とアイロンがけがおろそかになった」こと。妻は忙しく、テイクアウトのお総菜が食卓に並ぶことが増えました。義母は料理が上手で、子どもの頃から手作り料理を食べてきた和食党の夫は、おしゃれなお総菜が苦手でした。
不満がたまった夫は激怒しました。しかし、妻にも不満はあります。自宅が相当気に入った夫は、休日は一日中自宅で過ごしています。ルーフバルコニーでガーデニングをはじめ、以前のように休みに外で楽しみません。
結局、話し合いは決裂。離婚することになったのです。一体、二人にとってのラグジュアリーなマンション生活は何だったのでしょうか?
そこからが大変です。贅沢三昧のこの夫婦、自分たちには厚生年金があることを良いことに、資産運用には積極的ではありませんでした。というのも、「人生100年というけど、うちは80歳まで生きたら御の字だね」と日頃言っており、資産形成はせず、目の前の生活を楽しむ方針にしていたそうなのです。
しかし、夫婦生活が破綻した今、財産分与は必要です。それでも夫は、この家は手放せないと言い張ります。
夫が育てたバラはとても見事で、「こんなにルーフバルコニーが広く、バラにとって環境が良い場所はない」というのが大きな理由です。「毎月、財産分与相当分のお金を支払う」としましたが、妻は納得できません。「子どもはまだ高校生。大学の費用も援助してほしい」と、二人の話し合いは平行線のままでした。
こだわりの自宅を売却して……でも住み続ける!
はたしてこのご夫妻には落としどころはないのでしょうか。いえ、あります。このご夫妻への提案は『リースバック』でした。リースバックとは、今の自宅に住みながら、不動産物件をリースバック取扱業者へ売却し、家賃を支払っていくというものです。ローン残高は、売却した金額で支払います。
このご夫妻の場合は、相続金で頭金が多かったのも幸いしました。また、人気物件なので、10年前以上の価格がついたのです。さらに家賃は相場より安め。ご主人もすんなり受け入れてくれました。
家賃を一生払い続ける負担はありますが、「バラと一緒にこの家に住みたい」という気持ちが優先事項でした。今のマンションは、夫の職場へのアクセスも良く、内装もご主人好み。また、息子さんが高校を卒業したら、大学へ通うために夫と二人で住むそうです。
一方妻は、離婚を機に人生を大きく変える予定とか。趣味のヨガインストラクターの資格を取得し、田舎暮らしを目指すそうです。キャリアアップして、外資系の企業への転職も視野に入れ、テレワークをして自分の生活費は稼ぐとのことです。
リースバックは、離婚時や相続時において『リバースモーゲージ』と共に最近注目をされています。マンションは不利と言われていますが、ブランドマンションは別。資産価値があれば、融資や売却の対象となるそうです。
ブランドマンションにこだわったこのご夫婦。救われたのかもしれません。
執筆者:寺門美和子
ファイナンシャルプランナー、相続診断士
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