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税務調査官「追徴課税1,200万円です」…54歳・サラリーマン夫を亡くした51歳・専業主婦妻への“無情な追い打ち”【税理士が解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年4月9日 11時30分

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(※写真はイメージです/PIXTA)

どちらかが専業主婦(夫)という夫婦の場合、万が一を見据えて正しい財産の管理をしておかなければ、相続時に本来より多く課税されてしまうケースがあります。本記事ではAさん夫婦の事例とともに、夫婦の預金口座の注意点について税理士事務所エールパートナーの木戸真智子税理士が解説します。

子供が独立。これからは夫婦2人でのんびりタワマン生活のはずが…

54歳のAさんは3つ年下の妻と2人で都内のタワーマンションで暮らしていました。Aさん夫婦には2人の子供がいますが、大学卒業後はそれぞれ社会人として一人暮らしを始めました。もともとは戸建てに住んでいたのですが、子供達と一緒に住まなくなってから、そこまでの広さは必要ないのと、管理が大変なので将来のことを考えて、タワーマンションに引っ越してきたのです。周辺には複合施設も近く、一戸建てのときは定期的にしていた庭の手入れなども必要がなくなったので、管理も楽で快適に感じていました。  

Aさんは会社員ですが、30代のころから、株式や不動産投資をするようになりました。というのも、Aさんの実家が不動産管理会社をしていたので、その影響でAさん個人も不動産投資に興味があり、親から譲り受けた不動産で投資を始めました。その後は自身で購入した不動産での賃貸経営も始め、ほかの投資にも手を広げていったのです。  

夫が54歳という若さで急逝

そんな多忙なある日、突然、Aさんは亡くなってしまいます。会社でも執行役員として多忙な毎日を過ごしていたせいか、身体に負担がかかる日々を過ごしていたなかでの悲劇でした。

突然のことで、Aさんの妻も子供達も、呆然とします。

身内に相続が発生すると、やることは盛りだくさんです。なんとか家族で支え合いながらお葬式や相続の手続きを進めることができました。Aさんは自宅のタワーマンションに加えて、賃貸不動産や株を複数所有していたことから相続税が発生しましたが、Aさんの保険金や退職金で納税も無理なくまかなうことができました。

これからは夫婦2人でのんびり過ごしていこうと決めたタワーマンションもAさんの妻だけで暮らすことになりました。少し時間が経過しても、やはり思い出すのは、家族で過ごした楽しい日々。戸建てから住み替えをしたときは手狭に感じたタワーマンションも、いまでは広く感じてしまう。そんな日々を過ごしていました。

幸い、子供2人が近くに住んでくれていたので、定期的に様子を見に来てくれるようになり、寂しさはまぎれることもありました。

税務調査官からのまさかの指摘

そんな日々を過ごしていたある日、税務調査がくることになりました。不動産や株も保有していたAさんの相続は手続きがいろいろと大変でしたが、Aさんは書類の管理を非常にきっちりしていたのと、妻にも情報共有をしていたので、申告に不備があるとは思いませんでした。

いまでは子供達も不動産管理を手伝ってくれるようになっていたので、子供達も税務調査の対応に協力してくれることとなり、税務調査当日を迎えました。

調査官は通帳の明細について、話をはじめます。Aさんの妻は大変驚きました。亡くなった夫名義の通帳だけではなく、妻や子供の通帳まで確認されていたのです。名義が妻や子供なのだから関係がないと思っていたのに、調査官は「これはAさんの財産ですね」と指摘し、その預金に対する追徴課税は約1,200万円にもなりました。

ずっと使ってきた妻名義の通帳の預金が相続財産とみなされたワケ

理由は下記のとおりです。

Aさんの妻は結婚をしてから仕事をしておらず、専業主婦として過ごしていました。日々の生活費はAさんから妻名義の通帳に振込をして、そのなかで必要な生活費をまかなっていました。Aさんが多忙なこともあり、その振込額はまとめてすることも多くあり、長年、そのように過ごしてきたので妻名義の預金残高も4,000万円ほどになっていました。調査官はこの預金は、夫の財産であると指摘をしたのでした。

このように亡くなられた方の名義ではないのに、相続の対象となってしまう預金のことを「名義預金」といいます。

ここで名義預金について解説をします。名義預金とは本人が存在を知らない、もしくは管理をしていない預金のことをいいます。名義預金とみなされた通帳については、たとえ名義が妻であっても、夫に相続が発生したらその夫の相続財産とみなされます。

名義預金とみなされるケースはいくつかポイントがあります。

1.妻が口座の存在を知らない。妻が管理していない。 2.預金残高が妻の所得状況と比べて不自然に多い。 3.口座の届出印が妻ではなく、夫の印鑑になっている。 4.預金が預けられたままで口座の引き落としがまったくない。

今回は上記の条件のなかでいうと、(1)はあてはまりません。しかし、その預金の原資が夫の収入によるものであるため、相続財産とみなされてしまったのでした。

Aさんの妻は思ってもみなかった状況に驚きました。それも仕方ありません。Aさんの妻はこの通帳は確かに妻の名義ですし、結婚して何十年も、この通帳を使ってきたのです。自分の通帳であり、自分の預金であるという認識でしたし、当然、節約をして日々やりくりをして、貯金ができるように努力をしてきた結果の預金だと思っていたのでした。

しかし、調査官は、結婚してから一度も働いていなかったAさんの妻の状況からみて、この預金は夫の財産であると告げます。Aさんの妻も、納得はいかないし、驚きましたが、預金の振込履歴が夫名義からの通帳からであるという状況からみても、認めざるを得ない状況となりました。

税務調査の対象は故人の預金口座だけじゃない

税務署は本人の承諾がなくても預金口座を調査できます。この調査は本人だけでなく、家族の口座も調査対象になることもあるのです。

金融機関は過去10年分の入出金データを保存していることが多いです。税務署は過去まで遡って確認することが可能であるため、不自然な預金の動きがあれば、一目でわかってしまうのです。

さらに、税務署はほかにも情報収集することができます。税務署は専用のシステムによって、過去10年間分の収入や通帳等の財産を把握することができます。

※ 国税総合管理システム(KSK)といわれています。

国税庁や税務署では、専用のシステムにより納税者情報を管理しており、そこには給与や確定申告のデータが登録されています。

記録されている所得状況と預金の状況を照らし合わせて、預金の使い道を調査してくことになるのですが、申告すべき人がしていないと税務調査の対象やお尋ねの対象となることがあります。これまでの蓄積された膨大な過去データをもとに照らし合わせているため、高確率で発覚するのです。

発覚したあとで支払う税金にはペナルティが課されるうえ、ペナルティを課されたという記録まで残ってしまうので、このような状況はできる限り避けるべきでしょう。

生活費を管理する妻名義の通帳…相続財産とみなされないためには

なぜ、こういうことになってしまうのかというと、夫から妻名義の通帳に生活費として送金されたお金は、妻のお金ではなく、夫のお金だからです。送金されたお金はあくまでも夫から生活費を預かったのであって、預かったお金で生活のやりくりしていただけにすぎないということになります。

そのため、夫から受けとったお金でコツコツ貯めたへそくりも、妻の財産ではなく、夫の財産となるのです。

妻が自分でコツコツと貯めたお金なのに、自分のものではないなんて、とても納得のいかないお話ではありますが、もしそれらを妻のものとするためには「贈与をしたという事実」が必要となってきます。

「贈与をしたという事実」とは?

贈与については、しっかりと正しい贈与とはなにかを理解しておくことが重要です。

贈与とは、贈与を受ける側も了承を得ていることがポイントになりますので、本人が知らない、了承を得ていない、管理していない、となれば、その贈与は無効です。そのため、夫婦間であってもしっかり贈与の事実を贈与契約書などで記録を残しておくことが最善の方法となります。

とはいっても、せっかく、日々の努力で貯めたお金が思ってもいないタイミングで税金を支払うことになってしまうのは納得がいかないものです。正しい知識と納税意識をもって、日々を過ごしていくことがなによりです。

木戸 真智子

税理士事務所エールパートナー

税理士/行政書士/ファイナンシャルプランナー

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