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老後資金2000万円だけれど夫婦の年金は月25万円足らず、繰り下げ受給して増やした方がいい?

Finasee / 2024年3月15日 11時0分

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Finasee(フィナシー)

天城俊雄さんは定年後も勤務先の再雇用で働いてきましたが、今年10月に満65歳を迎えて退職し、同時に公的年金の受給も始まる予定です。しかし、自分なりに年金について勉強した結果、元気なうちはアルバイトなどで収入を得ながら年金の受給を繰り下げた(遅らせた)方がいいかもしれないと考えるようになりました。

1年繰り下げるごとに8.4%年金額が増えるのは魅力的でした。天城さん夫婦には現時点で2000万円の金融資産がありますが、夫婦の年金額だけでは暮らしていくのが精いっぱいで、どちらかが病気や要介護になった時の費用が賄えるのか不安だったからです。

しかし、逆に繰り上げ受給をしたという自営業の同級生から「もらえるものは早くもらった方がいいんだよ」と言われて頭を抱えてしまいます。

悩める天城さんを救ったのが、あるお金の専門家でした。動画共有サイトでも活躍する専門家との出会いと、予想外の解決策に至るまでの経緯を天城さんからうかがいました。

〈天城俊雄さんプロフィール〉

神奈川県在住
64歳
男性
会社員(定年後の再雇用)
妻と2人暮らし
金融資産2000万円

自営業の友人らは「繰り上げ受給派」が多数

定年後は再雇用で働いています。今年10月に満65歳となり、完全リタイアするかどうか迷っていました。

再雇用で働き出した頃は年金などまだまだ先の話と考えていましたが、昨年からは特別支給の老齢厚生年金(1985年の年金改正の経過措置として、一定期間に生まれた人は65歳より早い時期から老齢厚生年金を受給できる)を受け取るようになり、気が付けば、あと半年ほどで年金の支給が始まるところまで来ました。

昨年辺りから年金のことが気になり、再雇用で働く同期や地元の友人などと話をする機会が増えました。驚いたのは、家業を継いだ自営業組では、60歳から繰り上げ受給をしている人が半数以上を占めていたことです。

周囲の意見を聞いて揺らぐ天城さんの考え

酒屋の小田切は来年40歳になる長男に店を任せて気軽な隠居生活を送っていて、月額4万5000円ほどの国民年金で趣味の撮影旅行を楽しんでいます。

受給を5年間繰り上げたことで支給額は3割ほど減ってしまったそうですが、小田切に言わせると、「年金出るまで待っている間に足腰を悪くしたり寝たきりになったりして、せっかくもらったお金が好きなように使えなかったら悔しいだろ? 俺たちくらいの年齢になると急に亡くなるやつもいる。もらえるものはさっさともらった方がいいんだよ」とのことでした。

家に帰って小田切の話を妻に聞かせたら、妻も、「それはそうよ。うちの姉だって、たんまり年金を受け取れるはずが1円ももらわないうちに亡くなってしまったし」と同調します。

義姉は学校の教師をしていましたが、定年を待たず、57歳で病死しました。義兄も教師で2人の子供がいましたが、その時点で成人していたため、遺族年金のようなものもろくすっぽ受け取れなかったと言います。

私自身はもう2~3年は小遣い稼ぎ程度に働いて、その間は年金を受給せずに繰り下げで受給額を増やしておくことを考えていました。

書店で手に取った年金の解説本には、1カ月繰り下げるごとに0.7%、1年ならなんと8.4%も受給額が増えると書いてありました。金利が上がってきているとは言え、今どき、そんな高利回りの預貯金などありません。

会社の同期と話していても、私のように「働けるうちは働いて、その間は年金を繰り下げておく」が多数派でした。それを妻に言うと、次のように反論されました。

「あなたの言っているのは机上の空論でしょ? 年金は貯金じゃないんだから、確実に受け取れるとは限らないじゃない。仮にお義父さんが亡くなった76歳まで生きるとしたら、全部の受取額ではどっちが有利になるのか、考えてみなさいよ」

地方の商家で育った妻は徹底した現実主義者です。これまでも車や家など大きな買い物をする際は、冷静にそろばんをはじいて実に的確な指摘をしてくれました。子供たちも皮肉を込めて、「どっちが家長か分からないよね」と言うほどです。

試算で「意外な結果」が分かり、ますます悩むハメに……

妻の指摘に従って試算してみたら、3年待って68歳から受給するよりも65歳から受け取り始めた方が76歳までの総額では1割ほど多くなることが分かりました。

妻の意見も一理あると思いつつも、繰り下げが捨てがたいのは、年金の増額効果です。私が10月分から受け取る年金は月額15万円強。来年4月に65歳になる妻の受給が始まっても、世帯で受け取る年金は25万円ほどです。退職金には手を着けておらず2000万円ほどの貯蓄がありますが、完全リタイアした後に夫婦のどちらかが要介護状態になったりしたら、果たして介護サービスや施設の料金を賄っていけるのか、不安しかありません。

そこで、意を決し専門家の方に相談してみることにしました。それが照岡さんです。社会保険労務士の照岡さんは定期的に年金に関する動画をアップしていて、半年ほど前からよく視聴していました。

動画共有サイトのビジネス関係のお問い合わせメールのコーナーから照岡さんに連絡を取ると、その日のうちに返信がありました。

私より20歳以上は年下に見える照岡さんは動画ではややくだけた印象でしたが、返ってきたメールは礼節をわきまえた丁寧なもので、「この人は信頼できそうだ」と思いました。幸いにも照岡さんの事務所が私の勤務先の近くだったので、翌週、事務所にお伺いすることになりました。

●年金受給を目前にして、受け取り時期に頭を抱える天城さん――社会労務士の照岡さんから受けた「意表を突くアドバイス」とは? 後編【年金の受け取りは本当に「繰り下げ」が正解? 64歳男性の不安に専門家が出した答えとは】で詳説します。

※個人が特定されないよう事例を一部変更、再構成しています。

森田 聡子/金融ライター/編集者

日経ホーム出版社、日経BP社にて『日経おとなのOFF』編集長、『日経マネー』副編集長、『日経ビジネス』副編集長などを歴任。2019年に独立後は雑誌やウェブサイトなどで、幅広い年代層のマネー初心者に、投資・税金・保険などの話をやさしく、分かりやすく伝えることをモットーに活動している。

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