実家売却で大金を得た弟の衝撃の使い道「あいつだけは許さない」姉が下した絶縁宣言
Finasee / 2024年3月22日 11時0分
Finasee(フィナシー)
<前編のあらすじ>
私は区役所勤務の夫と中学生の娘、小学生の息子の4人暮らしです。同じ千葉県内の実家には80代の母と独身の弟が暮らしていましたが、昨秋、母が階段から落ちて大腿骨を折り、その後の回復が思わしくないため、高齢者施設への入居を勧められました。
●前編:【優しかった弟はいまや “子供部屋おじさん”―家族を悩ませる45歳男性の「身勝手すぎる言動」】
入居費用を捻出するため実家を売却することに問題は施設の費用でした。実家や私の自宅のあるエリアの特別養護老人ホームは順番待ちの状態で、母の担当のケアマネジャーさんが探してくれたすぐに入居な可能な比較的料金が安い施設でも、入居一時金が300万円、月額利用料が15万円、別途医療費や介護サービスの利用料がかかるとのことでした。
幸い、母には年相応の物忘れはあるものの認知機能の低下はほとんど見られず、施設入居について話をすると、「つましく暮らしてきたつもりだけれど、預貯金は200万円少ししかない。お前や弘之に迷惑はかけられないから、これからのことを考えると家を売るしかないね」と言われました。
私は20代で家を出ましたが、実家で半世紀近く暮らしてきた母にとって家族の思い出が詰まった家を手放すのはつらい決断だったに違いありません。「うちが援助できれば良かったけれど、住宅ローンもたっぷり残っているし、子供たちもお金がかかる時期だから、役に立てなくて本当にごめんね」と母に謝りました。
実家は私鉄沿線の駅から徒歩で20分ほどかかりますが、100坪の広さがあり、それなりの値段で売れるのではないかと思いました。
「どこに行けばいいわけ?」ごね始めた弟ところが、思わぬところから横やりが入りました。“子供部屋おじさん”の弟です。
「そんな大事なことをお母さんとお姉ちゃんで勝手に決めないでよ。家がなくなったら僕はどこに行けばいいわけ? そもそもお母さんは『弘之はずっとここにいていいよ。いずれは弘之のものになるんだし』と言ってたんだからさ」
全く当事者意識がなく、自分のことしか考えていない弟に腹が立ちました。「それならお前がお母さんの施設代を払ってくれるの?」と切り返すと、「お姉ちゃん、僕の懐事情は知ってるでしょ? そんなの払えるわけないじゃん」と薄笑いを浮かべます。
子供の頃は口数こそ少ないけれどいつもニコニコしているやさしい子だったのに、いつの間にこんなクズ野郎になったのだろうと思いました。
しかし、背に腹は代えられません。母と話し合い、近くに住む叔父(亡父の弟)にも間に入ってもらって弟を説得し、実家の売却に同意させました。しかし、弟はさんざんごねて、2400万円という実家の売却益の中から毎年100万円ずつ5年間、計500万円を受け取ることになったのです。
分割にしたのは司法書士をしていた叔父の助言で、新設された相続時精算課税制度の非課税枠(年間110万円)を利用して贈与税がかからないようにしたと聞きました。
さらにむかついたのが、その後の弟の行動です。さっさと勤務先の近くに賃貸物件を見つけて出ていったのはいいけれど、売却が決まった実家の片付けをするつもりは毛頭なく、仕方なく夫や子供たちも駆り出して丸々1週間実家に通い、不要な電化製品や家具、衣類、本などを処分しました。
私たち一家は無報酬。しかも、その間私はパートに出られませんから実質減収で、まさに踏んだり蹴ったりです。事情を知る母だけが、「お前にだけ面倒なことを押し付けちゃって悪いね」とねぎらってくれました。
あまりの暴言に絶句、絶縁を決意実家の片付けをしている際に、私や弟の子供の頃の絵日記や作文、通信簿などが見つかりました。母が大事に取っておいてくれたのだと思うと胸が熱くなりました。弟に届けてあげようと翌週、初めて弟の引っ越し先を訪れました。
その建物を見つけた時、本当にここで合っているのか、弟からもらった住所を何度も確認してしまいました。弟にはいささか身分不相応な新築のしゃれた物件だったからです。
在宅していた弟は私を部屋に上げることもせず、差し出された子供の頃の思い出の品々に当惑した表情を浮かべました。
「そんなもの、わざわざ持ってきたの? 要らないからどっかに捨ててよ」
その言葉にカチンと来て、言うつもりのなかった言葉が思わず口を突いて出てしまいました。
「何それ? そもそもこんな高そうな物件によく住めるわね。家賃、払っていけるの?」
すると、弟は例の薄笑いを浮かべてこう言ってのけたのです。
「大事な鉄道グッズを置く部屋は確保しないといけないから、狭い家には住めないんだよ。家賃は10万円以上かかるけど、5年間は例の100万円がもらえるし、その後は母さんの“遺産”が入ってくるだろうから大丈夫じゃないの」
あまりの暴言に返す言葉がなく、持ってきたものを全部弟に押し付けると逃げるようにしてマンションを出ました。
リハビリ病院での母は体の自由が利かないのがもどかしそうで、慣れない施設への入居に不安もあるようでした。それでも私や娘、息子が見舞いに行くといつも満面の笑顔で迎えてくれます。そんな母の姿を思うと、涙が止まりませんでした。すれ違う人が心配そうに私を振り返ります。
あいつだけは許さない。私は二度と弟には関わらないと心に決めました。
※個人が特定されないよう事例を一部変更、再構成しています。
森田 聡子/金融ライター/編集者
日経ホーム出版社、日経BP社にて『日経おとなのOFF』編集長、『日経マネー』副編集長、『日経ビジネス』副編集長などを歴任。2019年に独立後は雑誌やウェブサイトなどで、幅広い年代層のマネー初心者に、投資・税金・保険などの話をやさしく、分かりやすく伝えることをモットーに活動している。
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