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【更地にしても売れない“負動産”】相続税評価額は約800万円の土地なのに…不動産屋からいわれた「衝撃の売値」とは

Finasee / 2024年4月27日 13時0分

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Finasee(フィナシー)

実家の土地が売れない! どうしよう

筆者の父が亡くなって、かれこれ4年近くなります。コロナ禍の影響で面談もままならないまま、2020年7月に亡くなりました。

てっきり母が家計のすべてを仕切っていると思っていたので、金額は大したことないものの、相続財産関係は「ま、どこかにまとめてあるだろうから大丈夫だろう」などと、高をくくっていました。

が、母は家の資産に関して全く関知せず、すべては父が仕切っていたことが亡くなってから判明しました。「実印はどこ?」「土地の権利書は?」「そもそも預金はいくらあるの?」と質問してもなしのつぶて。

変なところに隠していた現金も含めて預金の類いはすべて回収できましたが、父の葬儀を終えた後、真っ先に行ったのは、家探しでした。

母親は葬儀の翌日、自宅で転んで大腿(だいたい)骨を骨折。そのまま入院したものの、歩行器なしには歩けないことが判明。自宅はバリアフリーではなかったので、自宅での生活を諦めざるをえず、退院後はサービス付高齢者住宅に入ってもらいました。

となると、「自宅をどうするか問題」が発生します。このままでは空き家になるのは必然。建物は築60年の木造ですし、地下鉄の駅から徒歩15分で、それ以外の公共交通機関がないという不便な土地ですから、そのまま買い手が付くことはないと判断し、更地にして売却しようともくろみました。

とはいえ、腐っても横浜の土地――相続税評価額よりも少し安いところで売れるかと思って売りに出しました。

が、売れないのです。

土地は35坪程度。不動産屋さんには、さまざまなところに話を持っていってもらったのですが、良い返事が全くなく、更地にしてから2年と7カ月が過ぎました。

ちなみに相続税評価額は800万円程度でしたが、果たしていくつか出てきた“売値”はいくらだと思いますか。

250万円です。

「250万円なら何とか引き取れるかも知れない」と言われ、実際に現地を見た途端、「これはダメだわー」と言われて、今も売れずに残っています。

何がダメなのかというと、やはり場所なのですね。急坂を登り切ってすぐ右折。その先は抜けられない道になっていて、しかも家が建っている土地は道路から一段下がったところにあります。水道管も古い規格なので、家を建てるとしたら、水道管も全て敷き直さなければならない。ということで250万円でも見合わない、ということのようです。

そんな状況もあり、母親が相続した土地は更地のまま放置されています。このまま売ることが出来ず、固定資産税を払い続けるのもばからしい。そこで最近、頭をよぎるのが「いっそのこと国に返納してしまおうか」ということです。

2023年4月からスタートした「相続土地国庫帰属制度」とは

幸いなことに、というか何というべきか分かりませんが、昨年4月から「相続土地国庫帰属制度」が施行されました。

この制度が導入されるまで、相続した不動産を処分するに際しては、

1.不動産市場で売却する
2.相続放棄によって、土地を国に帰属させる

という2つの手段がありました。これに「相続土地国庫帰属制度」が施行されたことによって、土地処分に関しては3つの選択肢がそろったことになります。

親と離れ、大都市圏で生活している子供は、親から実家の相続を受けたからといって、そこに戻って生活することは、ほぼないと言っても良いでしょう。こうなると、実家は完全な空き家になり、下手をすると所有者不明土地になる恐れがあります。これを防ぐために新設したのが、相続土地国庫帰属制度です。

国にとっても“引き取れない”土地がある

もちろん、すべての土地が引き取り対象になるわけではありません。なかには引き取れない土地もあります。それは致し方のないところですが、申請すれば法務局が現地調査を行い、引き取れると判断した場合は、その土地の持ち主が10年分の管理費用を支払ったうえで、国に返すことができます。

引き取ってもらえる土地には基準が設けられています。

たとえば建物が建っている土地、担保権などの権利が設定されている土地、特定有害物質によって汚染されている土地などは、その事由があった時点で、現地調査をするまでもなく却下されます。これが「却下要件」です。

また却下要件が含まれていない土地であったとしても、状況によって引き取ってもらえない場合もあります。これを「不承認要件」といって、

1.崖(勾配が30度以上であり、かつ高さが5メートル以上)がある土地のうち、通常の管理に必要以上の費用や労力がかかるもの
2.土地の管理や処分を阻害する工作物、車両、樹木、その他の有体物が地上にあるもの
3.除去しなければ通常の管理、処分ができない有体物が地下にあるもの
4.隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ通常の管理、処分ができないもの
5.通常の管理、処分を行うに際して、過分の費用や労力が必要なもの

という5点が、その要件となります。法務局が現地調査を行い、これらのいずれかに抵触した場合、土地の引き受けが却下されるケースがあります。要するに、土地の管理や処分を行うにあたって、費用や労力が過度にかかると思われる土地は、この制度の対象にならないのです。

また、この制度を使うにあたって気になるのは、「10年分の管理費用がいくらになるのか」ということでしょう。管理費用が高いと、利用が進まなくなる恐れがあります。

10年分の管理費用は基本的に20万円です。法務局が現地調査を実施し、引き受けることが決まった時点で20万円を納付すれば、その時点で土地の所有権が国に移管されます。

これに加えて、実際に現地調査を行う場合の手数料がかかります。金額はおおむね1万4000円程度なので、合わせて21万4000円が、土地を国に返還したいという人が負担する金額になります。

施行から1年、実際の利用状況は…

相続土地国庫帰属制度が施行されて1年が経過しました。法務省が2024年3月31日現在の利用状況を公表しています。

それによると、申請件数の総数が1905件で、このうち帰属された件数が248件です。内訳は宅地が107件、農用地が57件、森林が6件、その他が78件となっています。

却下および不承認件数のうち、却下件数が6件で、却下理由としては、「現に通路の用に供されている土地に該当した」が4件、「境界が明らかでない土地に該当した」が2件です。

不承認件数は12件で、その理由としては「土地の通常の管理又は処分を阻害する工作物、車両又は樹木その他の有体物が地上に存する土地に該当した」が3件、「民法上の通行権利が現に妨げられている土地に該当した」が1件、「所有権に基づく使用又は収益が現に妨害されている土地に該当した」が1件、「国による追加の整備が必要な森林に該当した」が2件、「国庫に帰属した後、国が管理に要する費用以外の金銭債務を法令の規定に基づき負担する土地に該当した」が5件でした。

そして取り下げ件数が212件あります。取り下げた理由としては、「自治体や国の機関による土地の有効活用が決定した」、「隣接地所有者から土地の引き受けの申し出があった」、「農業委員会の調整等により農地として活用される見込みとなった」、「審査の途中で却下、不承認相当であることが判明した」といったことになっています。

鈴木 雅光/金融ジャーナリスト

有限会社JOYnt代表。1989年、岡三証券に入社後、公社債新聞社の記者に転じ、投資信託業界を中心に取材。1992年に金融データシステムに入社。投資信託のデータベースを駆使し、マネー雑誌などで執筆活動を展開。2004年に独立。出版プロデュースを中心に、映像コンテンツや音声コンテンツの制作に関わる。

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