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後輩たちが「萎縮してるぞ」 先輩に憧れ奮闘も届いた指摘…名門主将が苦悩から脱却

FOOTBALL ZONE / 2025年1月10日 21時10分

■前橋育英MF石井陽が歩んだ名門校キャプテンとしての姿

 前橋育英(群馬)の背番号14でキャプテンMF石井陽には2人の憧れている先輩がいる。

 1人は2017年度の全国高校サッカー選手権大会で初優勝に導いたMF田部井涼(現・ファジアーノ岡山)。もう1人は、2022年度に3度目の全国制覇となるインターハイ優勝に導いたMF徳永涼(現・筑波大)だ。

 この2人に共通しているのは同じ背番号14、キャプテン、ボランチであること。前橋育英はほぼ毎年、チームで一番実力があるボランチが14番を背負う。過去には山口素弘、松田直樹の2人のワールドカップ戦士も背負ってきた番号だ。

 さらに人間的にも一番信頼が厚い人間がキャプテンマークを託されるが、当然、この3つを同時に背負うことの責任は非常に重く、生半可な覚悟ではできない。

 田部井も徳永もそのプレッシャーに悩みながらも、毅然とした態度でチームの先頭を走った。仲間だけでなく自分にも厳しく、常に自立と自律を自分自身に促しながら自己成長も実現させていく。その過程があったからこそ、彼らは全国優勝のキャプテンとなった。

 華やかな舞台で14番を背負って輝く姿と、その裏で苦しみながらも考え、自分を律しながら成長していく陰の姿も見ていたからこそ、石井は心の底から2人を憧れ続けた。

「田部井さんがあまりにも個性的な選手が揃うチームをまとめるには相当苦労したという話は聞いていますし、悩んだ末に誰かの真似をするのではなく、自分らしく引っ張っていこうとしていたことも聞いています。涼さんは誰よりも身近で見てきた存在でした。涼さんは怒りや思ったことをしっかりと口にして周りを律するタイプの選手で、その裏で厳しいことを言うことで必要となる責任に対して一切逃げることなく向き合っていく姿は本当に尊敬しいていました」

 自分も彼らのようになりたい。1年時から出場機会を掴み、昨年からボランチとして不動の存在となった。そして、今年は選手間投票でキャプテンに任命され、14番も託されたことで憧れの存在だけなく、自分が超さないといけない2人にもなった。

 だが、3つを背負う重みは想像以上に重かった。最初は徳永のように周囲に厳しく要求することでチームを引き上げようとしたが、周りの反応は想像したものとは異なった。

「ちょっと厳しく言いすぎじゃないか?」「後輩たちが萎縮してしまっているぞ」

 指摘を受けたことで、「ここで意志を曲げてしまってもいいのか?」と悩んだ。徳永に連絡をして相談したこともあった。その中で「自分らしくチームを引っ張ろう」という考えに至った。

「僕は厳しく言うよりも、周りと対話をしてコミュニケーションを深めながらやったほうがいいのではないかと。同級生、後輩関係なくコミュニケーションをとって、みんなの意見を吸い上げながら、いいものはいい、ダメなものはダメと自分が判断してやっていくのが一番なんじゃないかと思いました」

■憧れの先輩を目指し「2人のように全国優勝の14番を見てもらいたい」

 自分なりのキャプテン像を考えた石井はすぐに実行に移した。自ら全体アンケートをとって、チームメイトの意見や要望を募り、そのうえで全体ミーティングをしたり、個別で話し合ったりと時間をかけてコミュニケーションを深めた。

 結果、チームからいい意味で笑顔が見られるようになった。厳しさは変わらないが、お互いが意見を交換しながら、時にはリラックスさせる雰囲気も出す。その中心に石井がいるようになったことで、チームは夏以降一気にまとまりを増した。

 プレミアEASTでは残留争いから6位まで浮上し、今大会では苦しい試合を何度もものにして、ついに国立競技場の舞台まで辿り着いた。

「14番の重みはこの1年間、ずっと感じながらプレーや生活してきたのですが、この大会で改めてその重みを感じています。注目されるし、チームのために戦うだけではなく、その中で自分の個性も発揮して、勝利につなげないといけない。簡単なことではないし、改めて田部井さんや徳永さんの凄さを痛感しています。でも、僕も14番を背負って国立でプレーするチャンスをもらえたからこそ、もっとそこに誇りと責任を持って、全力でサッカーを楽しみたいと思います。2人のように全国優勝の14番を見てもらいたいなと思います」

 決意と希望を胸に、石井はキャプテンマークと14番を携えて、国立のピッチの中央に威風堂々と立つ。(FOOTBALL ZONE編集部)

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