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日本の解き方 石炭火力は廃止しかないのか? 欧米にはない日本の新技術でCO2を抑制可能、エネルギーの安定供給優先を

zakzak by夕刊フジ / 2024年5月10日 6時30分

CO2の排出を極限まで抑える石炭火力発電の実証試験が進む大崎クールジェン (J―POWER提供)(夕刊フジ)

主要7カ国(G7)気候・エネルギー・環境相会合は、二酸化炭素(CO2)の排出削減対策がなされていない石炭火力発電を2035年までに段階的に廃止することで合意し、共同声明を採択した。温暖化ガス排出量を実質ゼロにする「ネットゼロ」の道筋に従い、「気温上昇を1・5度に抑える目標に沿った時間軸」という表現も盛り込まれた。

石炭は悪者にされている。石炭は、あらゆる燃料の中で最も「炭素集約度」が高く、しかも窒素酸化物や硫黄酸化物などの有害物質も排出するからだ。

しかし、それらの排出が抑えられれば、その経済性などの優位性を生かすことができ、各国の実質的な「ネットゼロ」と矛盾しない。

東日本大震災後、即時の「脱原発」が主張された。だが、主義主張によりエネルギー政策を論じることは危険だ。技術によるコスト低下や国際的な環境変化があれば全く別の話になる。

2011年、ドイツは原発廃止を決めた。その結果、太陽光・風力発電政策に翻弄される状態を自らつくり出した。隣国の原発大国フランスから電力を輸入しつつ、電力供給維持のためロシア産天然ガスに過度に依存したことが、ロシアによるウクライナ侵攻で裏目に出た。これは歴史的教訓だ。

石炭火力も同じ議論ができる。幸いにも日本には、石炭火力において有害物質排出を抑える技術がある。欧米では、そうした技術がないので旧来の石炭火力設備が更新時期に来たとき、新技術の更新ができない。このため、石炭火力を廃止し、別のエネルギーという選択肢にならざるを得ない。

しかし、日本では新技術があるので、日本の「ネットゼロ」という枠組みの中で既存の石炭火力の更新か、別のエネルギーか、という選択ができる。

現状、日本では、再生可能エネルギーは価格が高く、発電量の不安定さをコントロールすることが難しい。しかも、再生可能エネルギーに過度に依存すると、事実上、中国依存となり、経済安全保障の観点から問題になり得る。その場合、安定供給が可能なエネルギー資源に乏しい日本としては、石炭を一定程度活用することは合理的な選択肢だ。

さらに、石炭火力発電を選ばざるを得ない国々もある。日本が持つ高効率発電技術の輸出を行えば、途上国の発展に対する貢献になることのみならず、当該国や世界の「ネットゼロ」への貢献にもなる。

なお、日本の最高効率の技術を、中国やインドといったアジアの国々と米国の石炭火力に適用すると、CO2削減効果は日本の排出量に匹敵するという試算もある。

さらに、愛知県の石炭火力・碧南火力発電所では、技術を進めて「CO2を出さない」火力発電という世界初の試みも行われている。

エネルギー政策は、リスクを最小化しリターンを最大化できる組み合わせを探る「ポートフォリオ理論」のように、種々のエネルギーをバランスよくという発想が安定供給に資するだろう。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

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