日本の解き方 周回遅れ「外国人との共生」欧米では外来種に在来種が駆逐 日本の社会保障は崩壊危機に 技能実習法と出入国管理法の改正議論
zakzak by夕刊フジ / 2024年5月11日 15時0分
「技能実習法」と「出入国管理・難民認定法」などの改正が国会で審議されている。どのような制度改正が行われるのか。海外の事例などから、どのような事態が生じる懸念があるだろうか。
技能実習法の改正では「技能実習」を廃止し「育成就労」とするとしている。次に、育成就労は試験などの条件を満たせば最長5年就労できる特定技能「1号」、その後に在留資格の更新に制限がない「2号」になることも可能だ。「2号」は家族を帯同でき、将来は永住権も申請できるとしている。
これで永住者は増加することが予想される。一方で、税金や社会保険料の未払いなどがある永住者については、国内での在留が適当でないと判断すれば許可を取り消すこともできるようになる。
いまの悪名高い「技能実習」がなくなるので、良い改正にみえる。もっとも、これまでの「技能実習」は、「国際貢献」を建前として、本音は「安価な労働力としての外国人受け入れ」だったが、今回の改正で、本音が前面に出てきただけだともいえる。
筆者が思うに、育成就労(前の技能実習)から特定技能、さらに永住権という流れは問題を抱えている。この流れがあるので、今回の技能実習法と出入国管理法改正は、実質的に「移民法」に見えるわけだ。
先進国なら、外国人の受け入れは、短期と長期に区別されている。それが、今回の改正では、育成就労(現在の技能実習)から特定技能、さらに永住権という流れがあり、その間に試験などの条件があるとはいえ、短期と長期の区別がなし崩しになっている。
今回の制度改正のベースになっているのは昨年11月30日に公表された法務省の報告書だ。そこには「外国人との共生社会の実現」に向けた取り組みが書かれているが、これは周回遅れの政策だ。今、欧米では共生社会を目指したツケが生じている。一部の国とは文化・風習が違いすぎるので、共生はできず、外来種に在来種が駆逐されるような事態が起きているのだ。
百歩譲って、外国人の受け入れが経済成長に資するのであれば、いろいろな対応ができるだろう。一般的に外国人を受け入れると、国内の社会保障制度へのマイナスのダメージがあるが、経済成長でマイナス面を補うのであれば、外国人受け入れという対応はあり得る。
そこで、移民人口比と経済成長の関係を調べてみた。国連のデータでは、2010~22年の平均データにより、各国の移民人口比と経済成長をみると、移民人口比が高くなれば経済成長率が上昇するという関係にはなっていない。ただ、移民人口比が高くなると経済成長しなくなるとまではいえない。
筆者の観点からは、外国人の受け入れでは社会保障の適用などについて「原則相互主義」を導入すべきだと思っている。でないと、日本の社会保障が崩壊させられてしまう。 (元内閣参事官・嘉悦大教授 高橋洋一)
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