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BOOK 音楽業界を舞台に予測不能のミステリー 真保裕一さんが自分を重ねて描いた「落ちぶれたアーティスト」の悲哀『魂の歌が聞こえるか』

zakzak by夕刊フジ / 2024年4月20日 10時0分

作家の真保裕一(夕刊フジ)

いろんな〝引き出し〟を持っている人だ。真保裕一さんの新刊の舞台は初めての「音楽業界」。だけどテーマはそこにとどまらない。少年法にネット社会問題などなど…。えっ? モデルはご本人だって!

――音楽業界を舞台に選んだのはなぜ

「何年か前に『音楽を文章で表現する』ことがはやったことがありました。なかなか面白い作品も多かったのですが、そのとき私は〝参戦〟せずに、少し違うアイデアを温めていた。それは、ポップ系の音楽業界の打ち明け話とともに、成功譚とちょっと落ちぶれたアーティストの話をからめること。そうすると物語に『奥行き』が出るように思ったのです」

――〝ちょっと落ちぶれたアーティスト(物語の御堂タツミ)〟が切ない

「これは、自分がモデルです。(物語の御堂のキャリアは)15年になるかならないか、ですが、私はもう(作家として)30年もやってきた。後は落ちていくだけでしょう。だからそこはもう、思い入れたっぷりに書かせていただきました」

――もう一方の主人公として素性を明かさない〝覆面バンド〟が

「今はたくさんいますよね。こっちのモデルはいませんねぇ。書きたい物語は決まっていたので、それに即した『人物』を登場させました」

一番の心配は“昭和クセぇ”って思われないか、ってことかな(笑)

――自身ではどんな音楽が好きですか

「R&Bが多いですね。というのもアニメの仕事をやっていたとき〝ながら作業〟で日本語の音楽を聴くと、気になって作業が滞ってしまう。だから『英語』がいいんですよ。もちろん、中学生のころにはフォークソングも聴いたし、自分たちでバンドを組んで作詞作曲をしたり…。音楽というのは『世代』が出るでしょう。(今回の作品で)一番、心配なのは〝昭和クセぇ〟って思われないか、ってことかな(爆笑)」

――その心配はありませんよ。日進月歩の最新の業界が描かれている

「変化が激しいですよね。ストリーミングが主流となってCDが売れなくなったり、社内ディレクターを『A&R』と呼ぶようになったり。知識だけはあったので、詳しい中身は業界の方に取材したりしたのですが、大事な(秘密の)話は教えてくれない」

――物語のもうひとつのテーマとして、ネット社会や犯罪を起こした者の「その後」の問題が扱われている

「罪を犯した者が、償った後でも、いつまでもそれを問われなきゃいけないのか? 隠していても、ネット全盛の世の中では、あっという間に暴かれてしまう。昔はそういうことはなかった。若い世代は大変でしょう。そういうことを問い掛けてみたい気持ちはありました。私だって他人ごとではありません。何かが起きたことによって、私の本がいっせいに書店から消えてしまうことだってあるかもしれないでしょ」

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