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久住昌之 するりベント酒 祝・六十周年!謙虚な特別版チキン弁当 スクランブルエッグ、レモン果汁にちーさいウインナー…地味だけどありがたいアレンジを享受

zakzak by夕刊フジ / 2024年12月29日 10時0分

いやー、今年は旅が多かった。ざっと数えただけで、一年間に70回以上は東京を離れていた。今まで生きてきた中で一番多いのではないか。ビックリだ。

そして今年最後に乗った新幹線で食べたのが、東京駅で買った「チキン弁当」だ。久しぶり。ボール紙の弁当箱に「おかげさまで60th」と印刷されている。なんと発売六十周年!そんなに長いこと売られている弁当なのか。ボクが6歳の時発売されたことになる。

初めてチキン弁当を食べたのは二十代の頃だ。若い頃は、新幹線に乗る時、定番として買っていた。いろんな駅弁を買うようになったのは、崎陽軒の「シウマイ弁当」を買うようになってからだ。

という話を、この連載で前にも書いた。だけど、60thに出会えて買ってみようと思って、買って新幹線の中で開いて、ちょっと驚いた。

ボクの知ってるチキン弁当と変わってる。長いこと味も形も変わらなかったから、すぐわかる。これは最近こうなったのか、60thの特別バージョンか?ボクが遅れてるだけ?

まずチキンライスの真ん中にスクランブルエッグがのってる!ボクは格別に嬉しいわけでもないが、見た目が華やかだ。オッと思った。それだけでいいじゃないか。チキンライスって、元々どちらかというと地味な弁当だ。「地味なんだけど、いつ食べてもそこそこうまい」というところが、ボクの駅弁の定番になった理由だ。ヘタな幕の内弁当は、食べたくもない料理でおかずの種類だけ増やしてる。あれは好かん。チキン弁当には、チキンライスと唐揚げだけ。その二つがおいしいのだから無駄がない。その二つを食べることに専念できる。清々しくさえある。

しかも、よく見ると、そのスクランブルエッグの横に、何かねっとりとした赤茶色のものが添えてある。これはなんじゃ。

舐めた。辛くはない。そんなに甘くない。なんだろう。あ、トマトかな?内容物を読んだら、ドライトマトを煮たものだった。またぁ、洒落たことするじゃないか。ケチャップでいいようなものを。さすが60th。

あとはいつも通り。グリンピースと定番の鶏唐揚げ4個。この唐揚げは慣れた味。飽きない味。

だ、が。なんじゃこれ袋に入ったの…「レモン果汁」とな!おお、これは気が利いてる。かけなはれかけなはれ!遠慮なく全部唐揚げにかける。かぶりつく。おお、レモン、効いちょる効いちょる!これはいいぞ。

そんでそんで、付け合わせも変わってるぞ。パッと見紅生姜、かと思いきや、食べたら違う。ニンジンサラダと紫キャベツをあえたものだ。小憎らしい真似してくれるじゃないの。これはありがたし。歓迎。

うーんこれは総合的に地味なれど素敵なお祝いバージョン。いかにもボクの愛してきたチキン弁当らしい、謙虚なスペシャルアレンジだ。拍手、拍手。

と思って食べてたら、唐揚げの下から、ちーさいちーさいウインナーが一本出てきたので、笑ってしまった。ウサギのうんちかと思ったよ。ウソ!ごめん!しかしそんな印象の、極小ウインナー。単四電池の半分ぐらい。笑っちゃう。グリコのおまけみたいだ。ありがたく享受。おめでとう60th!

(マンガ家、ミュージシャン)

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