マネー秘宝館 いつの世にも繰り返される本物と偽物の追いかけっこ いずれは奥さん、旦那さん「なりすましロボット」も登場?
zakzak by夕刊フジ / 2024年4月24日 15時30分
多いですねえ、なりすましメール。銀行やカード会社、税務署の名まで語って、個人情報を盗もうとするメールの多いこと多いこと。あらゆる手段で個人情報を盗もうとする迷惑メール、被害者は私たちだけではありません。銀行やカード会社、税務署もまた被害者です。なぜなら、もはや○○銀行の名でメールを届けたとしても開封してもらえません。実際、連絡がしにくくなって困ってると思いますよ。
これ、かつての「火災報知機の誤作動」を彷彿とさせます。その昔、よくビルの火災報知機が誤作動を起こして鳴っていました。毎度、「うるさいなあ」とムカつくわけですが、そんなことより問題なのは「本当の火災」のとき、みんな「また誤作動か」と思って、避難しなくなること。このような「信じてもらえない」狼少年現象がいまやメールや電話はじめ、デジタル環境のあちこちで発生しています。偽物が増えすぎて本当のことが伝わりにくいご時世、困ったものです。
「本当のことが伝わりにくい」という意味では、飲食店の情報サイトも同じ。例えば、私がお気に入りのレストラン、なぜか検索サイトでは評点が低いのです。ほぼ言いがかりに近い文句が書かれているのも見ました。おそらくこれは「ライバルからの妨害」ではないかとにらんでいます。自分の店のお客を増やすためには、他店を平気でけなす。レストランに限らずあらゆる情報サイトで「足の引っ張り」が出ているのは間違いありません。
悪口を書かれたレストランの心中、お察しします。客の私ですらムカつくのだからご主人、はらわたが煮えくり返っていると思います。
あと10年もすれば「なりすましロボット」でも登場しそうな勢いです。警官そっくりのロボットが自宅に現れて情報聞き出すなどは十分にありそう。さらに20年後になれば「奥さんなりすましロボット」まで登場することでしょう。亭主から金を盗んだ上に、説教して帰るのです。そして最も怖いのは30年後に登場する「亭主なりすましロボット」。これが家に置かれて年金を受け取り、亭主本人は家を追い出されるとか(笑)。
そんな「偽物こわい」騒ぎは、かつてアメリカにもありました。
アメリカの19世紀、富豪たちの間で起こった印象派絵画ブーム。その火付け役となったのがパリの画商、ポール・デュラン=リュエルです。彼は個人的に親交のあったモネ、ルノワール、ピサロといった画家の絵画をアメリカで売りまくりました。購入したアメリカ人からすると「贋作をつかまされる心配がない」ことがこの画商から購入する理由の1つでした。
というもの、当時のアメリカ人富豪は「古い偽物」をつかまされてガックリくることが多かった模様。だからこそ「偽物でない」ことが大切だったのです。
いつの世にも繰り返される本物と偽物のいたちごっこ。どうせなら自分の偽物が登場して代わりに仕事してくれればいいのに(ちなみにこれを書いているのは本物です)。
■田中靖浩(たなか・やすひろ) 公認会計士、作家。三重県四日市市出身。早稲田大学商学部卒業後、外資系コンサルティング会社勤務を経て独立開業。会計・経営・歴史分野の執筆・講師、経営コンサルティングなど堅めの仕事から、落語家・講談師との共演、絵本・児童書を手掛けるなど幅広くポップに活躍中。「会計の世界史」(日本経済新聞出版社)などヒット作多数。
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