少しでも大谷選手にネガティブなことを言う人間は許さない…そんな空気に警鐘を鳴らしたい(立岩陽一郎)
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年4月27日 11時3分
水原一平容疑者に関する声明を発表した大谷翔平(Sportsnet LA/Los Angeles Dodgers 提供・共同)
【立岩陽一郎 漂流するメディア】
《謝罪しろ》《自称ジャーナリストの立岩陽一郎が最も酷い》――こうした声が私に届けられる状況が続いている。ドジャースの大谷翔平選手の元通訳で、違法賭博にはまり銀行詐欺の疑いで訴追された水原一平容疑者の件についてだ。正確には、この一件に関する大谷選手についての私のコメントへの反発だ。
それだけではない。コメンテーターなどメディアに関わる著名人からも、同じような指摘がなされている。もちろんそれは私を名指ししたものではなく、大谷選手の対応に疑問を呈した人間全般への「謝罪要求」という形で出され、それがうねりをつくり出していると言ってよいだろう。
被害者である大谷選手に、なぜ金を盗られたのかを語らせることは「人の道」に反すると説く人もいる。こうした中で、「最も酷い」といわれる私への批判は当然強まる。分かりやすい構図だ。
では「最も酷い」という私の発言とは何だったのか。その内容は日刊ゲンダイDIGITALの4月6日公開の記事を読んで欲しい。大谷選手が日本時間3月26日に声明を出した際、なぜ大谷選手が全く知らずに水原容疑者が資金を動かせたのかという点について疑問が残ったという印象を語ったものだ。
とはいえ、明確に答えなければ不正が疑われると言っているわけではない。4月9日放送の「めざまし8」(フジテレビ系)での私の発言をデイリースポーツが以下のように報じている。
《立岩氏は『頑張って欲しいんだけど、それには今回みたいに、聞かれたことに答えるということを普通にやることが、多分大谷選手にとっていい結果になると思う』と、求められた取材に応じ、それに率直に答えることが結果にもつながるのではないかと推測。『こういうのをフランクに、率直にやってほしい』と願っていた。》
私が伝えたのは、わからないことはわからない、話せないことは話せないと明確にすることで大谷選手は説明責任を果たしたことになるということだ。それは、問題に触れないというのとは違うということを語ったもの。これは普通のことを言ったまでだ。私には、一連の謝罪要求に合理性があるとは思えない。
■「謝罪しろ」と発言する人たちは訴状を読んだのか
私の疑問に戻ろう。水原一平氏の違法な送金が大谷選手の全く知らないところでどうやって行われたのか、それが分からないと言っているだけのことだ。
その後にアメリカの捜査当局が裁判所に提出した訴状が公になった後に「謝罪しろ」騒ぎが起こったわけだが、そうした発言をする人々はそもそも訴状を読んでいるのか? まさかコメンテーターが他人に謝罪を要求していて、その訴状を読んでいないとは思わないが、どうだろうか。実は、訴状では、この私の疑問は解消されていないと書いたら、驚くだろうか。
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