野球好きだけを集めるのは「限界がある」 隣で飲食イベントも…新球団が描く経営戦略
Full-Count / 2024年4月13日 8時10分
■佐賀インドネシアドリームズの連載第2回、チームの地域貢献と交流
固定観念や常識から脱却すれば、課題解決のヒントが見えてくる。4月13日に開幕戦を迎えるヤマエグループ・九州アジアリーグの佐賀インドネシアドリームズは、球場周辺で大規模なイベントを開催して観客を集めようとしている。地域貢献の仕方も野球にとらわれず、新しい形を探していく。(聞き手・楢崎豊、間淳)
佐賀インドネシアドリームズは今季から独立リーグ「九州アジアリーグ」に参加する。選手はインドネシアを中心に、日本やスリランカなど計5か国から集まっている。ユニークなのはチーム構成だけではない。独立リーグでは課題となっている観客動員も、既存のやり方とは違った方法を考えている。球団運営にも加わっている香月良仁監督は「独立リーグは多くても1試合の観客が2000人ほどです。私たちは地域を盛り上げるイベントを仕掛けて、5000人の観客を目指しています」と宣言する。
第1弾となるイベントは、開幕カードの4月13、14日に開催する。球場と隣接するスペースに飲食店やマルシェが約25店舗並ぶ。その周りには、野球のストラックアウトとキャッチボールクラシック、フリースローなどが体験できるブースを置き、ステージでは野球YouTuber・トクサンらのトークショーや太鼓・ダンスのパフォーマンスなどを予定している。香月監督が狙いを説明する。
「イベントの横で野球の試合をしているというイメージです。野球の競技人口が減っている中で、野球が好きな人だけを球場に集めるのは限界があります。それよりも、野球やスポーツに興味がない層を取り込んで、試しに野球を見たらおもしろいというやり方が普及活動だと思っています」
元ロッテでプレーした香月良仁監督【写真:球団提供】
■元ロッテ投手・香月監督が持ち合わせるイベント企画のノウハウ活用
野球観戦が好きな人は食べ物や飲み物を手に試合を楽しむ。試合に飽きてしまう子どもはスポーツ体験やステージを満喫する。野球への興味を問わず、足を運びたくなる空間をつくろうとしている。開幕戦のチケットは1000円(指定席2000円)で、イベント会場のスポーツ体験ブースのフリーパスとチケットの番号で現金が当たる特典付き。香月監督は「イベントや特典目当てでチケットを購入する人がいても良いと思っています。エンターテイメント性を持った球団にして、認知度や集客を高めていくつもりです。今までにない挑戦になりますが、新しい独立リーグの形になればと考えています」と意気込む。
イベント開催には実績がある。香月監督は昨年4月、熊本県で体験型スポーツと食を融合したイベントを実施し、約2万人を集めている。独立リーグの球団は一般的に外部発注してイベントを開催するため、採算を取るのが難しい。一方、佐賀インドネシアドリームズは香月さんがノウハウを持っているため、経費を大幅に抑えてイベントの企画や運営を球団だけで完結できる。
野球以外の要素も盛り込んだイベントは地域の活性化につながる。さらに、佐賀インドネシアドリームズでは多岐に渡って地元の交流を積極的に進めていく。野球では、すでに地元にある中学生の硬式野球チームと合同練習を行った。所属する24選手のうち大半がインドネシアをはじめとする東南アジア出身のため、中学生たちは学校で学んだ英語にジェスチャーを組み合わせてコミュニケーションを取っていたという。
ホームタウンとする佐賀県嬉野市と武雄市からは、高齢化が進むまちのサポートを依頼されている。福原佑二代表は「まちが困っていることはボランティアで協力しますし、祭りのような地元のイベントにも積極的に参加するつもりです。お茶やお米が有名な土地なので、選手が農作業をお手伝いして、SNSで発信していければと思っています」と語った。発信力の面では日本だけではなく、SNSを活用して選手の母国にも嬉野市や武雄市の魅力を届けられる。香月監督は「選手が発信した商品やサービスを知った人が佐賀に興味を持ったり、商品を購入したりして、地元に還元できる仕組みをつくっていきたいです」とビジョンを描いている。
球団ができるのは、野球を通じた競技普及や地域貢献だけではない。チームや選手の特徴や強みを生かせば、可能性は広がっていく。(間淳 / Jun Aida)
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