出資に見合わぬ効果で撤退…厳しい独立リーグの運営 打開策は「7億人」の高い広告効果
Full-Count / 2024年4月15日 7時20分
■佐賀インドネシアドリームズの連載最終回…独立Lに必要な新たなビジネスモデル
プロ野球球団、さらには他競技のクラブ経営の新たなモデルになるかもしれない。今季から独立リーグ「ヤマエグループ九州アジアリーグ」に加わった佐賀インドネシアドリームズはチームの特徴を生かし、独特な方法で球団を運営する。地域クラブは地元企業や自治体で支える概念を覆そうとしている。(聞き手・楢崎 豊、間 淳)
ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)、プロ野球、甲子園が証明しているように、野球は日本で“国技”と言えるほど人気が高い。だが、全国各地にある独立リーグの球団経営は決して楽ではない。選手やスタッフの人件費をはじめ、遠征費や設備管理費など経費は膨らむ。その費用は、スタジアム入場料やグッズ販売だけではまかなえず、地元企業からスポンサーを募るのが一般的だ。企業は地元チームを応援したい気持ちはあるだろう。そうは言っても、出資に見合う宣伝効果を得られなければ、金額を少なくしたり、スポンサーから撤退したりする。
佐賀インドネシアドリームズの福原佑二代表と香月良仁監督は野球界に携わってきた経験から、独立リーグに新しいビジネスモデルを確立する必要性を感じてきた。香月監督が語る。
「広告宣伝費という面で考えた時、費用対効果が大きくなくても、お金が集まるのが野球です。他のスポーツと比べて恵まれていると思います。ただ、このやり方では5年、10年後に独立リーグが発展していくのは難しいという危機感があります」
近年は野球以外の競技が普及し、都道府県や市町で複数のプロスポーツチームが活動している。佐賀県にもサッカーのサガン鳥栖、バスケットの佐賀バルーナーズがある。県内企業には数や資金に限りがあるため、佐賀インドネシアドリームズは、その目を県外に向けている。福原代表は、こう話す。
「私たちの球団を支援してくださっているのは全国各地の企業やエンジェル投資家です。東南アジアに野球を普及させる球団のビジョンに興味を持っていただいたり、将来的に東南アジアへの事業拡大を検討したりしているケースが多いです。ビジネスの1つのツールとして、野球チームを支援する形です」
佐賀インドネシアドリームズのメンバーたち【写真:球団提供】
■各国の大臣クラスの人物も球団のアドバイザーに名を連ねている
佐賀インドネシアドリームズはインドネシア出身選手を中心に、スリランカ、シンガポール、フィリピン、日本の選手が所属している。各国の大臣クラスの人物も球団のアドバイザーに名を連ねている。チームのスポンサーになることで、東南アジアとパイプができる。インドネシア出身の選手が日本企業の商品やサービスをSNSで発信すれば、インドネシアをはじめとする東南アジアの人々に情報が届く。
福原代表は「日本で広告を載せると1億2000万人が対象ですが、私たちのチームの選手の出身地5か国の総人口は約7億人です。他の球団の広告よりも価値は高いです。選手たちは地元ではスターなのでSNSの拡散力もあります」と説明する。東南アジアで事業展開を考えている企業にとって、球団サポートを通じて得られるメリットは大きい。
また、佐賀インドネシアドリームズを運営する「NEO ASIA JAPAN」は東南アジアの企業と日本の企業をつなぐビジネスを展開していく。東南アジアに拠点のない日本企業の商品を「NEO ASIA JAPAN」が仲介して東南アジアに販売したり、逆のルートで販売したりする総合商社のようなイメージだ。球団経営にも携わっている香月監督は「日本の人、モノ、サービスをインバウンド、アウトバウンドして会社自体を大きくし、将来的にはスポンサーに頼らない球団運営のモデルをつくっていきたいと思っています。球団経営が安定しないと人件費を抑えないといけなくなり、選手の成長やチームの発展がありません」と力を込めた。
佐賀インドネシアドリームズは東南アジアの選手が日本で野球の知識や技術を身に付ける環境を整え、その先に東南アジアでプロチームをつくるビジョンを描いている。大きな夢をかなえるには健全な球団経営が不可欠。本拠地を置く地元・佐賀はもちろん、県外や海外にも目を向けて、今までにない球団モデルを構築する。(間淳 / Jun Aida)
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