阪神には「全然怖さがない」 “33-4”の当事者が回顧「パのほうがレベル的に凄い」
Full-Count / 2024年5月9日 7時20分
■藤田宗一氏はロッテ入団から7年連続Bクラス「優勝は絶対ないと思ってた」
ロッテを始め3球団で600試合全て救援登板したサウスポーの藤田宗一氏は、1998年のロッテ入団から7年間はBクラスしか知らなかった。しかし、2005年はリーグ優勝を飾り、一気に日本一に駆け上がった。「ロッテのユニホームを着て優勝は絶対ないと思ってましたから。あんなん味わえるとは。ロッテに来てよかったです」。冗談交じりに感激のシーズンを回想する。低迷球団は如何にして変身したのだろうか。
2005年のロッテはスタートダッシュに成功。4月終了時点で首位に立った。この年から日本球界では交流戦が実施された。「オープン戦ではなく、セとやれるのは楽しみでしたね。自分たちがどれぐらいのレベルなんかな、という気持ちがありました」。
ロッテは5月から6月半ばの36試合を24勝11敗1分け。交流戦の初代王者に輝いた。「これで今年はいけるんじゃないか。みんなで話していましたね」。前年までの雰囲気とは明らかに異なり、上位進出へチームは自信を深めた。
試合運びでも勝利の方程式が確立された。ゲーム終盤を薮田安彦、藤田氏がつなぎ、最後は抑えの小林雅英で逃げ切る形。3人の頭文字をアルファベットで表現した「YFK」だ。
藤田氏は共に年下の戦友を頼もしそうに評する。「ヤブは自己中心ってわけじゃないけど、自分の事をきっちりやるという感じ。マサはキャッチボールやウエートトレーニングを一緒にやったり、『飯に行くぞ』の仲でした」。出番の順も「相手が左バッターなら大体僕ですから」。トリオの呼吸は抜群だった。
■誕生日にリーグ制覇…日本S第1戦は濃霧コールドで「ついてる。休めた」
藤田氏は、「YFK」は実は「パクリ」だったと記憶する。阪神のジェフ・ウィリアムス、藤川球児、久保田智之の3投手のリレーで締める「JFK」が先に騒がれていた。「ロッテの担当記者の方たちにも言いましたもん。『YFKって、パクリやん』って」。
ロッテはレギュラーシーズンでソフトバンクに逆転されたものの、2位でプレーオフに進出した。当時はプレーオフを制したチームがリーグ優勝。「勢いがあって、誰もが負けないと思っていたんです。普通にやれば勝てると」。第1ステージでレギュラーシーズン3位の西武に2連勝。敵地でソフトバンクと激突した第2ステージを3勝2敗で制し、パの頂点に立った。
優勝決定日の10月17日に藤田氏は3番手で勝利投手。この日は自身33歳のバースデーでもあった。「前日はチームは負けて2勝2敗のタイになったんですけど、『こりゃ俺の誕生日にいいプレゼントになるな』と心の中で考えてました」。予感を現実にした夜はビールかけの後も、誕生日を祝うために予約していた福岡市内の韓国料理店で痛飲した。喜びは二重奏だった。
日本シリーズは奇しくも必勝パターンの“本家”阪神との激突となった。それでも、ノリノリのロッテに怖いものなどなかった。「野手陣がJFKは打てるって言うんです。全然怖さがない。パの方がパワーピッチャーが多く、レベル的に凄いんだ、と」。
藤田氏は初戦で日本一を確信したという。本拠地・千葉マリンに濃霧が立ち込め、10-1で7回裏1死コールド勝ち。投手は先発の清水直行だけで賄えた。「濃霧なんて、まずないでしょ。あの時点で、こっちがついてる。中継ぎも休めましたしね」。第2戦は10-0、甲子園に舞台を移した第3戦も10-1と圧倒して王手をかけた。敵地の熱狂的な阪神ファンも「呆れてたみたいですね。ロッテを応援してくれる声が聞こえました」。
第4戦は初めての接戦。ロッテは「YFK」、阪神も「JFK」の6人全員が登板した。ロッテが3-2でしのぎ切り、ストレートでけりを付けた。両チームの総得点“33-4”は当時、大きな話題になった。
大舞台で強烈なインパクトを残したロッテの認知度は急上昇した。「そうですね。そこはやっぱり人気のある阪神さんのおかげ。JFKのあの3人のおかげです」。藤田氏は会心の1年を振り返った。(西村大輔 / Taisuke Nishimura)
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