俳優人生50年以上の藤竜也に聞く「やっぱりほめられるとうれしいんですよ、人間てね」主演映画特別インタビュー
ガジェット通信 / 2020年1月8日 10時0分
技能実習の職場から逃亡、他人になりすまして働きにきた中国人青年と、彼を受け入れる孤独な蕎麦職人の決断と運命を描くヒューマン・サスペンス映画、『コンプリシティ/優しい共犯』が、2020年1月17日(金)に公開となります。
その厳格な蕎麦屋の主人・弘を、日本を代表する名優・藤竜也が好演。映画のことだけでなく、俳優としての思いもうかがいました。
■ストーリー
技能実習生として来日するも、劣悪な職場環境から逃げ出し、不法滞在者となってしまった中国人青年チェン・リャン。彼は他人になりすまし、蕎麦屋で働き口を見つける。口数が少なく不器用な蕎麦屋の主人・弘は、実の息子との関係も悪くどこか心に孤独を抱えていた。厳しくも温かい弘の背中に父を重ねるチェン・リャンと、彼の嘘をつゆ知らず情を深めていく弘――二人はまるで親子のような関係を築いていく。しかしはかない嘘の上に築いた幸せは長く続かず、チェン・リャンを追う警察の手が迫り、すべてを清算する日がやってくる。その時、二人はお互いのためにある決断をする――
●蕎麦屋の主人を演じた感想はいかがですか?
俳優という職業のおかげで、人が経験できないような様々な職人の仕事を、マスターするまではもちろんいかないけれども、深く経験することができる。わたしはそれが好きなんです。今回も楽しく修行させていただきました。
●長編映画は初となる近浦監督との仕事はいかがでしたか?
監督という仕事は大変な仕事。しかも初めての長編作品で日中合作。撮影にこぎつけるまでに様々なことを手掛けて、完成したら今度は海外の映画祭に出して。そのエネルギーは凄い。尊敬します。
●短編の時と何か違いは感じましたか?
それは不思議と感じなかった。近浦監督は感情が表に出るタイプじゃなくて。長編だからうれしい、力が入っているみたいな感じもなく。クールにこなしていたからかな。
●完成した映画を観た時の感想をお聞かせください。
「近浦さんおめでとう!」「良かったね!」」って。自分のことのようにうれしかったですよ。
●不法滞在者となってしまった青年が主人公で、日本の闇とも言えるテーマですが、思うことはありますか?
僕は日本の闇の部分とは思わない。世界の、人間の闇の部分だったり、国家や社会という仕組みが持っている宿命だと思う。それは100%完全にはならない。どんどん改良を加えていかなければならない。それは一人の市民がなんとかできることじゃなくて、日本をガバナンスしている人たちがすることだと思うけど。
(映画を)観た人たちは、この映画の主人公のような異国に働きに来た人たちが実際どんな生活してるのかなって興味を持つぐらいで僕は良いと思う。この映画の本質はそこではなく、異邦人が日本という国でほろ苦い切ない青春を送る、青春ストーリーだから。そして彼を見つめるおじいちゃんっていうね。人と人の間にある、優しさや希望。それが大事なんだと感じてもらえたらいいんじゃないかな。
●50年以上の役者人生を送っているかと思いますが、やりがいは何でしょうか?
それはやっぱり人にほめられることだね。演じた作品が「良かったよ」と言われるのはうれしい。僕が映画で担っている部分はちっちゃなことで、俳優やスタッフみんなが同じように少しづつ請け負って、それを監督がコントロールして一つの作品を作る。だから作品自体がほめられることはうれしいね。やっぱりほめられるとうれしいんですよ、人間てね。
●役者になっていなかったら、ほかにやりたい仕事はなんですか?
……ないですね。ちっちゃな虫ばっか研究して一生過ごすとか、そういう職業を知ったりすると、それもなんか良いなと思うことはあるけど(笑)。
●ガジェット通信の読者にメッセージをお願いします!
多様性への対応って、これから避けられないことだし、意識・気持ちを変えていかないといけないのかもしれない。
でもそんな難しいことじゃなく、この映画の私が演じたおじいちゃんみたいに、「中国からはるばるよう来たね~俺の店で働いてよ」って自然体で受け入れていくことなんじゃないかって、僕は思いますよ。
映画『コンプリシティ/優しい共犯』は、2020年1月17日(金)より、ロードショー
(執筆者: ときたたかし)
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