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『ゴッドランド/GODLAND』監督インタビュー「デンマークとアイスランドを対峙させた時、それらがどのように姿を現すのかを探りたかった」

ガジェット通信 / 2024年4月13日 10時0分

各国でロングランヒットを記録、第96回米アカデミー賞国際長編映画賞アイスランド代表作品でショートリストにも選出された、北欧発のスリリングで壮大な人間ドラマ『ゴッドランド/GODLAND』が、3月30日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開しています。

本作は、日本ではトーキョーノーザンライツフェスティバルで紹介された『ウィンター・ブラザーズ』(2017)、『ホワイト、ホワイト・デイ』(2019)で国際的に高く評価されてきた、今や北欧で最も注目を集めるフィルムメーカーのひとり、アイスランドの気鋭・フリーヌル・パルマソン監督による長編3作目となります。

未知なる植民地アイスランドへ布教の旅に出た若きデンマーク人の牧師、大自然の驚異、異文化の衝突をスリリングに描く、北欧発の壮大な人間ドラマ。フリーヌル・パルマソン監督のインタビューをお届けします。

■公式サイト:https://godland-jp.com/ [リンク]

●本作『ゴッドランド/GODLAND』の舞台は、アイスランドがデンマークの統治下にあった時代ですが、 この植民地時代の物語を描くことの、どこに惹かれたのでしょうか?

わたしはアイスランド人でアイスランドで育ちましたが、デンマークに長く住み、そこで子供を育てました。そしてわたしの人生は、この2つのまったく異なる国に分断されてきました。わたしたち(アイスランド)は、第二次世界大戦までデンマークの統治下にありました。そこには多くの歴史があります。ただ、そのことが映画で探求される様子を、わたしは観たことがありませんでした。そしてデンマークとアイスランドの歴史だけでなく、言語や人々の間のミスコミュニケーションなど、正反対のものを探りたかったのです。この2つの国を対峙させた時、それらがどのように姿を現すのか、それを探りたかったのです。

主人公の牧師ルーカスはデンマーク語を話していて、アイスランド語は理解出来ないので、誰が誰を理解しているのか、登場人物がお互いをどれだけ理解しているかは分かりません。それがやがてラグナルとの間での大きなミスコミュニケーションになるのです。

●デンマークからアイスランドに渡った宣教師たちについて、どのくらい調べたのでしょうか?

実際の出来事から反映されている部分はたくさんありますが、本作はフィクションです。ルーカスをルーテル派の牧師として作った理由は、わたしがルーテル派として育ったからかも知れません。わたしは無宗教ですが、当時、ルーテル教会はカトリック教会と対立していました。しかし、アイスランドの大部分はまだ異教徒だったので、彼らはアイスランド人を正しい教会に入れようとしていたんです。そこには豊かな歴史があります。

しかし、ここで使われたのは、たいていアイスランドの牧師でした。彼らはデンマークで学び、アイスランドに戻り、デンマークのために働きました。その後、デンマークの牧師がアイスランドに来て、すべてが上手くいっていることを確認していたのです。

●撮影はいかがでしたか?

この作品の脚本は、わたしが自分の暮らす地域を念頭に置いて書かれています。アイスランドの南東海岸周辺です。朽ち果てた馬は父の馬で、近所の土地で1年以上かけて撮影しました。氷河の季節の映像は、夏の終わりにキノコ狩りをする場所で2年以上かけて撮影しました。

この映画の最初のキャンプは、冬に氷の中でマスを釣る場所でした。ほとんどのロケ地はわたしが何度も訪れている場所です。なかには車で行くことが不可能な場所もありました。そこではすべての機材を自分たちで運び、馬だけで移動しなければいけませんでした。この過程があったからこそ、この辺りの風景を真実味のある形で描くことができたと思いました。わたしたちは登場人物と一緒にこの旅を経験することができました。

製作するのは、とても挑戦的な映画でした。時系列で撮影しましたが、上手くいきました。これと違うやり方は想像もできません。肉体的には大変でしたし、(ルーカスを演じた)エリオット・クロセット・ホーヴは12キロも減量して本当に真剣でした。

●エリオット・クロセット・ホーヴとイングヴァール・E・シーグルズソンが演じる、このふたりの関係は非常に興味深いものです。同時に惹かれ合う要素もある彼らの対立をどう捉えましたか?

多くの点で、わたしは彼らを正反対のものとして見ました。光をもたらす者で、若くて野心的な知識と理想を持つルーカスは、この異国の地にやって来て、ゆっくりとすべてを剥ぎ取り、彼を打ち負かす自然に遭遇する。ラグナルは年老いた男で、アイスランドの荒野に馴染んでいる。

しかし、映画の後半では彼は本領を発揮できず、自分の考えや当時の人々に根付いていた神への恐れと闘っていることが分かります。わたしはふたりを人間として描こうと強く決心していました。ラグナルを禅のような自然愛好家として、ルーカスは狂信的な宗教聖職者としてではなく、彼らがひとつのものであると同時に、驚きを与え、まったく違うものになる可能性があることを示したかったのです。

●ちなみに娘さんと一緒に仕事されていますね。それは今後も続けていきたいことでしょうか?

彼女が演じたイーダは、デンマーク人とアイスランド人の両方の世界を良い部分を併せ持つキャラクターです。彼女は自然に近く、動物にも近いのです。一方でピアノを弾き、現代社会とデンマーク文化の一部でもあります。映画の中では彼女にその中間的な存在になってほしかったのです。映画の登場人物がデンマーク人かアイスランド人だとすると、彼女は真ん中に立っています。

イーダは最初からわたしとふたりの息子と一緒に働いてくれました。子どもたちと一緒に作った短編「NEST」がとても好きで、楽しく制作できたので、現在次の短編映画に取り組んでいます。タイトルは「JOAN OF ARC」です。イーダはわたしの映画で非常に重要な役割を果たしてくれたので、彼女のためにもっと書きたいと思っています。賢い女性で、一緒にいるととても楽しいです。彼女がわたしに飽きなければ、きっともっと一緒に映画を作ることになるでしょう!

■ストーリー

若きデンマーク人の牧師ルーカスが、植民地アイスランドへ布教の旅に出る。任務は、辺境の村に教会を建てること。しかしアイスランドの浜辺から馬に乗り、陸路ではるか遠い目的地をめざす旅は、想像を絶する厳しさだった。デンマーク嫌いでアイスランド人の年老いたガイド、ラグナルとは対立し、さらに予期せぬアクシデントに見舞われたルーカスは、やがて狂気の淵に落ちていく。瀕死の状態で村にたどり着くが……。

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(執筆者: ときたたかし)

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