誰かのためにプレーすること、明治大GK服部主将の“改革”と日本一への道
ゲキサカ / 2016年8月16日 14時21分
実際にこの日の決勝・順天堂大戦。学年関係なく、ピッチ上では声でのやり取りが頻繁に行われたが、萎縮した態度を示す選手はいなかった。先発したMF小野雅史(2年=大宮ユース)は「(先発を外れた)大阪体育大戦で4年生のプレーを見て、責任感や戦う姿勢をすごく感じて、勉強になりました。この試合は4年生のためにも戦うことを考えてやりました」と言い、MF柴戸海(3年=市立船橋高)は「仲間と声を掛け合って、4年生のためにという想いがあった」と語る。
4年生CB小出は「この大会では下級生がめちゃくちゃ声を出してくれたし、本当に成長してくれたなと思ったので、良かったです」と感謝を口にすると、「卒業していった先輩たちには、“借りを返しました!”と言いたいです。今日応援に来てくれたOBの方もいますし、山本アナ(OB山本紘之アナウンサー)からも“リオから応援しています”と連絡が来て。自分たちが想像している以上に沢山の人に応援してもらっているんだなと感じていました。そういう想いに応えることができて良かったです」と微笑んだ。
主将の服部は「自分たちのやるべきサッカーを一人ひとりが理解したなかで、思っていることを伝え合って、徹底してできたことが勝利につながったんじゃないかなと思います」と胸を張る。
また、今季の明治大にとってターニングポイントとなったのは“立正大戦”に他ならない。総理大臣杯開幕前の7月下旬に行われた天皇杯出場権獲得がかかった東京都サッカートーナメント・準決勝で立正大に2-4で敗れたのだ。服部や小出をメンバー外として、総力戦で臨んだ試合。東京都リーグ勢に負けた。この敗戦で遠い目標を見据えるよりも、目の前の一試合を懸命に戦い切る大切さを学んだ。
栗田大輔監督は「このトーナメント(総理大臣杯)が始まる前に、痛い敗戦をして、チームが一つになった。やるべきことはなんだろうと、全員で戦おうというのが統一されて、ひとつのベクトルになった。今回のトーナメントも“一戦一戦を戦おうよ”というところがぶれなかったのが一番の勝因かなと思います。昨年までは“優勝したい”などの想いが強かったのですが、目の前の一戦一戦を大事にすることによって、結果がついてくることを知り、今年の大会には落ち着いて臨めたのかと思う」と語る。
互いの思いを知るなかで、自然と誰かのために戦うようになっていった。目標に捉われすぎることなく、目の前の一試合に身を捧げた。そしてつかんだ日本一。明治大の守護神は、試合後こそ喜びを爆発させていたものの、時間とともに表情を引き締めた。
「日本一にはなれましたけど、楽な試合は一試合もなくて、ここから三冠を目指す中では、まだまだ実力的に拮抗する試合が多くなると思うので。一試合一試合、目の前の試合に向けてチームをつくっていければ」
ここからまた明治大の新たな章は始まる。総理大臣杯初優勝という歴史を作った世代は、三冠という偉業に挑むのだ。紫紺の軍団は驕ることなく、謙虚に真面目に戦い続ける。
(取材・文 片岡涼)●第40回総理大臣杯特集
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