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『SEVENDAYS FOOTBALLDAY』 夏の終わり(都立三鷹中等教育学校)

ゲキサカ / 2017年8月27日 12時32分

 延長後半10分。三鷹にFKが与えられる。おそらくはこのゲームのラストプレー。“6年生”の岡本大輝が右足で描いた放物線に両チームの選手が殺到すると、ボールは「いつもウチのセットプレーの時は一番後ろで守っていて、中には入らないんですけど、最後だから『もう行くしかない』って思い切って入った」相田の肩に当たり、ポストにも当たってゴールラインをわずかに越える。なんと相田はこれが公式戦初ゴール。土壇場で三鷹が見せた奇跡的な同点劇。勝敗はPK戦に委ねられる。

 1人目。先攻の駒場が成功したのに対し、後攻の三鷹は奥村がGKに止められてしまうが、キャプテンは「雰囲気が悪くなったらPKも負けると思っていたので、明るく振る舞おうと」毅然と上を向く。3-2で迎えた4人目。堀切は完璧なセーブでボールを弾き出したものの、その裏の三鷹のキッカーはクロスバーにぶつけ、点差は縮まらない。

 運命の5人目。決められれば、その瞬間に“6年生”の高校サッカーが終わる重要な局面。ゴールライン上に立った堀切は集中するあまり、これが5人目のキッカーだと気付いていなかったという。研ぎ澄まされた感覚に突き動かされ、気付けば相手のキックを掻き出していた。「アイツなら止めるなって感じ」と奥村が話せば、「やってくれると思ってましたし、もっと止めてくれると思いました」とは相田。「5人目だという意識がなかったのが良かったかもしれないです。逆にそれでリラックスできたので」と振り返る守護神の2本連続セーブ。延長後半に続き、三鷹は2度までも崖っぷちから生還する。

 勝敗は7人目で決した。先攻が決め、後攻はGKにストップされた。駒場の歓喜がピッチに弾ける。「悔しかったんですけど、先輩たちも終わるまでは絶対泣かないようにしていましたし、僕らもそこで取り乱したら三鷹らしくないんで、最後までやってからということは考えていました」。そう話す奥村を先頭に、駒場のベンチへ、本部席へ、そして声援を送り続けた応援団へ、順番に挨拶していく。そこまで懸命に耐えた三鷹の選手たちは、それから少しだけ泣いた。「負けた後にみんな泣いていたんですけど、逆にすがすがしくてやりきったという感じで、涙もすぐには出てこなかったんです。そういう面ではやってきたことが最後にしっかりできたかなというのがあります」と語った堀切の目も少し濡れていた。負けた悔しさはもちろんだが、「『これで終わっちゃったな』と思うと寂しいですね」(堀切)という心情の方が、より彼らの涙腺を刺激したのではないだろうか。

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