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『SEVENDAYS FOOTBALLDAY』 夏の終わり(都立三鷹中等教育学校)

ゲキサカ / 2017年8月27日 12時32分

 駒場の山下監督にとって三鷹は前任校であり、選手権で全国ベスト8まで導いた思い入れのある高校。「感慨はあるし、運命を感じるよね。還暦でそろそろ終わるタイミングに、それも都大会を懸けて三鷹とやるなんて」と運命のいたずらに苦笑した指揮官は、「やっぱり伝統だよな。ゴール前の守備は厳しい。よくみんな頑張ってるよ。3点くらい入ったと思ったもん。アレは三鷹の伝統で、中等になっても受け継がれているのかなって思うよね」と、かつて自らが心血を注いだ対戦相手を称えた。

 試合後のミーティングが終わると、15人の“6年生”で記念写真を撮ることになった。示し合わせたかのように紺のポロシャツと白のポロシャツがほとんど半々。最初は“紺組”が前列に、“白組”が後列に並ぶ。ところが“紺組”にヒザをケガしている選手がいることに周囲が気付く。「座れる?」「厳しいよね?」「立った方がいいよね?」。次々とその選手に声が掛かり、程なくして“紺組”と“白組”はスッと前列と後列を入れ替えた。この写真撮影の少し前。「僕らの代は少ない人数でやってきた分、全員で仲良くやってこれたので、その部分はこの試合でも出せた感じはします」と奥村が胸を張った言葉を思い出す。こういう何気ない場面にグループの関係性は滲む。あまりにも自然に入れ替わった“紺組”と“白組”に、何とも言えない羨ましさを感じずにはいられなかった。

 相田に聞いてみた。「“6年生”のみんなに伝えたいことってある?」と。「伝えたいこと…」と呟いた彼は、ちょっとだけ考えてこう答えてくれた。「『ありがとう』と『受験頑張ろうね』って。ここから切り替えられるかわからないですけど(笑)」。

 数か月後には大学受験が控えている。その先にもまだ10代の“6年生”たちには、様々なことが待ち受けているだろう。でも、あの100分間とPK戦を経験した彼らには、困難へ直面した時に立ち返る“拠り所”がある。あの延長後半10分の状況より、あのPK戦で5人目が蹴る直前の状況より追い込まれる瞬間は、おそらく人生でもそう多くはない。相田の公式戦初ゴールは、堀切のPKストップは、間違いなく15人をどんな時でも勇気付けてくれるはずだ。

「サッカーしかしていないので、勉強はしていません」と堀切が笑顔で言い切った夏がもうすぐ終わる。これからずっと、この季節になれば彼らは “6年生”だったあの日のことをきっと思い出す。ただ、それがかけがえのない宝物であることに気付くのは、もう少し先のことかもしれない。

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SEVENDAYS FOOTBALLDAY by 土屋雅史

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