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伝説のPKストッパー…驚異のPK阻止率の“秘密”に迫る:後編

ゲキサカ / 2017年10月14日 0時28分

2016年10月22日、バレンシア対バルセロナ戦。2-2の後半アディショナルタイムにFWリオネル・メッシがPKで決勝点を決めた

 今夏より母国のフラメンゴでプレーするGKジエゴ・アウベス(32)はリーガ・エスパニョーラ史上最高のPKストッパーとして“伝説”を残した。07年からアルメリア、11年からはバレンシアのゴールを守り、48回のPKのうち実に22回をストップ。驚異のPK阻止率の“秘密”はどこにあるのか。PKの真実とは何なのか。蹴る側と止める側、双方について英紙「フィナンシャル・タイムズ」が総力取材。大型ルポルタージュとして展開した。以下、「クーリエ・ジャポン」より抜粋し、前編・後編に分けて掲載する。

From Financial Times (UK) フィナンシャル・タイムズ(英国)
Text by Murad Ahmed
▼前編はこちら

 PKを分析した学術論文は数多い。PKの場面は、「ゲーム理論」を現実の世界で検証できる典型的な例だからだ。ゲーム理論とは、「お互いに行動が影響しあう状況下で、ゲームの参加者はどのようにふるまうのか」を経済学者が研究する際に用いるものだ。

 映画『ビューティフル・マインド』の主人公、天才数学者のジョン・ナッシュが研究していたのもゲーム理論である。

「私たちのような経済学者が映画に出てくることはありません」。こう語るのはロンドン・スクール・オブ・エコノミクスのイグナシオ・パラシオス=ウエルタ教授。彼はゲーム理論を検証するのにPKこそ最適だと考え、何千ものPKの結果を分析した。

 ゲーム理論でよく分析されるのは、複数のプレイヤーの思惑が入り乱れる場合だ。だがPKはそうした状況とは異なり、2人のプレイヤーが演じる「ゼロサムゲーム」である。

 キッカーにとって最高の結果、つまりゴールを決めることは、キーパーにとって最悪の結果だ。キーパーにとって最高の結果、つまりシュートが外れることは、キッカーにとって最悪の結果だ。

 こうしたゼロサムゲームでは、各プレイヤーの戦略が限定される。まずキッカーはいつも同じ方向に蹴るという「純粋な」戦略を選ぶことができる。しかしそうなると、キーパーは徐々にこのパターンに気付くようになるだろう。

 そのため、キッカーとキーパーは、どちらの側にボールを蹴るか、またはどちら側に飛んでゴールを防ぐかをランダムに選ぶ「混合戦略」を選ぶことになる。だが、これは「ボールを蹴る方向をゴールの両側に均等に振り分ける」という意味ではない。

 キッカーにとって、ナチュラルサイドのほうがより強い力で精度良くボールを蹴ることができる。だから合理的な選択として、キッカーはより多くナチュラルサイドに蹴るだろう。だがキーパーの裏をかく必要もあるので、その逆側に蹴ることもある、という話だ。

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