『SEVENDAYS FOOTBALLDAY』: 一歩ずつ。一歩ずつ。(FC町田ゼルビアユース)
ゲキサカ / 2018年2月22日 19時16分
東京のユースサッカーの魅力、注目ポイントや国内外サッカーのトピックなどを紹介するコラム、「SEVENDAYS FOOTBALLDAY」
監督の竹中穣はきっぱりと言い切った。「僕個人の感情だけで言えば『ジャンプアップはねえな』って。やっぱり一歩一歩、一つひとつ積み上げるしかない作業なんだなって、6年やらせてもらって、改めて毎年感じます」。一歩ずつ。一歩ずつ。FC町田ゼルビアユースが丁寧に踏みしめてきた道は今、そこへ続こうとする者たちを彼らがイメージしてきた方向に導きつつある。
2014年1月。新チームの“新人戦”に当たる東京都クラブユースU-17サッカー選手権大会で、決勝リーグまで勝ち上がったゼルビアユースは、FC東京U-18と好ゲームを演じる。アグレッシブな姿勢を打ち出し、前半にカウンターから先制点を奪取。最後は意地を見せた相手に、後半44分に失点を許して1-2と逆転負けを喫したものの、当時の立ち位置を考えれば、大善戦と言っていいような内容と結果だった。
そんな印象を持って指揮官の竹中に話を聞くと、想像とは全く違う感想が次々に口を衝く。「僕らがゴールまで速く進むというのは、実際に顔を上げてプレーできていない証拠。ボールが動く距離とか、人が準備をしておくことは非常に怠けてしまっていたので、ああいう形になったのかなと思います」「スコアだけが収穫かなと。内容は散々というか、どっちかというとネガティブな捉え方しかしていないですね」。正直に言って面食らったのと同時に、結果に左右されない竹中の視点と明瞭な口調を強く記憶している。
それから4年。彼らを取り巻く環境は着実に変化してきた。2014年には都内で上から5番目に属していたリーグ戦のカテゴリーも、一つずつピラミッドを駆け上がり、今シーズンは上から2番目のT2リーグへ参戦。加えて、2015年に夏のクラブユース選手権で初めて全国を経験すると、再び関東予選を勝ち抜いた昨年の同大会ではグループステージを突破し、全国ベスト16まで躍進した。
迎えた今シーズンの“新人戦”。目標は竹中監督就任以降、まだ達成していない決勝リーグ突破。すなわち、3位決定戦と決勝の舞台となる西が丘で戦うこと。キャプテンを託された鈴木舜平も「グループを見た時に『西が丘に行けるな』と思いましたし、ゼルビアはもう決勝でやらなきゃいけないチームになってきていると思います」と力強い決意を口にする。
1月21日。初戦の相手はFCトリプレッタユース。今年は同じT2リーグを戦う、実力伯仲のライバルだ。開始からインテンシティの高いバトルが繰り広げられ、1年生フォワードの前田陸斗は「今日みたいなバチバチした試合は好きなので、やっていてニヤニヤが止まらないくらい楽しかったですね」と笑顔を見せる。前半41分にPKを獲得したのは、同級生の橋村龍ジョセフのトップ帯同を受け、「最高学年のフォワードはもう自分しかいなくて、責任もあります」と話す齊藤滉。それを佐藤陸がきっちりと沈め、1点のリードを奪う。
そのまま1-0で突入した試合終盤。ゼルビアユースはコーナーキックを手にすると、追加点を狙うより、コーナー付近で時間を潰す方を選択した。このことについて、竹中はこういう見解を示す。「去年は『勝利を追求する』というテーマで、それを継続することと、今年は『プロ意識を持って取り組む』というテーマを掲げている中で、彼らなりのジャッジがああいう表現だったのかなと、僕は非常に前向きに捉えています」。そのコーナーキックをショートで始めた野呂光希もこう口にする。「絶対に勝っておきたい試合で、勝てば少しでもこの後を有利に進められる所もあるので、『西が丘に必ず行きたい』というみんなの気持ちだったと思います」。そのまま“ウノゼロ”で勝ち切った彼らは貴重な勝利をもぎ取った。
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