「どうやったらマラドーナに勝てるか」監督・風間八宏の原点
ゲキサカ / 2018年3月29日 7時0分
―マラドーナから何を学んだのでしょうか。
風間 学んだというよりは自分を知ることでしょうね。小柄な体型ですけどマラドーナは何をやらせても凄かった。ボールは取られないし、逆にボールを取っちゃう。パワーもあるし、ドリブルもうまい。彼がボールを持つだけで、相手は何もできなくなっていましたから。マラドーナを見たら、すぐに帰りたくなる。「早く帰って練習しよう」と思って。
―ワールドユース選手権におけるマラドーナのプレーで特に印象に残った試合、印象に残ったシーンを教えてください。
風間 確か、アルジェリア代表との試合だったと思います。ドリブルで上がっていって、シュートと見せかけてかかとで味方にパスを出してアシストする場面がありました。トップスピードでこの一連の動作をやり切ってしまう。マラドーナはボールを手で扱うのと同じように、足で操っていました。自分で見たものを実際にやってみようと思っても、それがなかなかできない。じゃあどうやったらマラドーナに勝てるんだろう、と考えるようになっていくんです。
―あのマラドーナに勝つために。
風間 そうです。サッカーはボールを持ったほうが強い。ならば、マラドーナにボールを奪われなければいいんだと。ずっと自分が、自分のチームがボールを持つ時間を長くすればするほど、マラドーナにやられる確率も低くなります。そのためにはどんな技術を身につけておかなければならないのか。そういう発想に立って、技術を上げるために自分に向き合っていく。だから僕の経験で言えば、戦術とかグラウンド上の“パズル”を見ていたわけではなく、見たい選手の技能を見ていました。個人を見ていくことで周りも見えてきますから、好きな選手をしっかり見るという要素は大切だと僕は思います。
―風間監督は「止める」「蹴る」という基本の重要性をよく口にされていますが、基本的な技術は、どうすれば上達するんですか。
風間 これは2月に出した『伝わる技術』(講談社現代新書)という本に詳しく書いていますが、結局は「自分の足と話をできる」かどうかです。例えば試合で一番使うインサイドキックですが、プロの選手でも正確で強いボールを蹴れる選手はなかなかいません。基本的なポイントが分かっていない選手は意外と多いです。足を強く振るのではなく、ボールの芯を強く捉えることを意識した方が質のいいボールが蹴れます。私の場合は一番固いかかとのインサイド側でボールを捉えます。最初はプロの選手たちにも、自分でやって見せて「お前らも自分のポイントを見つけろ」とだけ伝えました。
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