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『SEVENDAYS FOOTBALLDAY』:二回り目の“千両役者”(FC琉球・播戸竜二)

ゲキサカ / 2018年3月29日 20時19分

 もう1つ。この日の試合後で印象深い光景があった。誰もいなくなったピッチ上。カクテル光線に照らされながら、たった1人でひたすらクールダウンを繰り返す。一歩、一歩。自らの体と対話するかのように、一歩、一歩。そのことについて尋ねられた播戸は、「浸ってたね。『今日も良い仕事したな』みたいな(笑)」とおどけながら、その一連に籠められた自らの想いも明かしてくれた。

「昔、エスパニョールに(中村)俊輔がいた時に、スタジアムに試合を見に行ったのよね。結局俊輔は出れへんかったんやけど、試合が終わってからずっと1人で走ってたのよ。やっぱああいうのを見て、『凄いなあ』って思ったね。ああいう所が、今でも彼が現役でやれてる理由やと思うし。だから、オレはもちろん自分のことを考えてああいうふうにケアはするけど、もしアレをどこかで見てる選手やったり、この試合のボランティアをしている高校生だったりが見て、何か感じてくれたら、それは1つオレが下に繋ぐことかもしれへんし、そういうのも選手としては大事なことかなと思う」。

 その言葉を聞いて、ふと藤吉信次を思い出した。ヴェルディ黄金期のムードメーカー。とにかく明るいキャラクターが印象的な選手だったが、指導者になった数年前に当時のことを伺うと、こう話してくれた。「僕はサッカーに対しては凄くマジメなんです。だから、外からどう見られても構わなかったんですよ。チームメイトはみんなわかってくれていたので」。播戸もあるいはパブリックイメージとして、藤吉に連なるキャラクターの系譜上にいるのかもしれない。ただ、きっと周囲の人間は、彼の努力もマジメさも十分にわかっているはずだ。だからこそ20年以上も第一線で、プロサッカー選手として生き抜いてきたのだ。本人はきっと、それを肯定することを恥ずかしがるのだろうけれど。

 38歳。プロ21シーズン目。それでも、前へ前へと走り続けることを止める気持ちは、さらさらない。「18歳でプロの世界に入って、20年やって、最初から試合に出ること、ゴールを決めること、J1でやること、いろいろな大会で優勝すること、代表に入ること、ある程度やってきて、それでまた試合に出れへんようになって、ベンチも入れへんようになって、また新しく“もう1回転”みたいな感じやから、本当に心若くやれてる。カテゴリーとかホンマ関係なく。また試合に出るためにとか、監督に信頼してもらうためにとか、チームメイトから信頼されるように頑張る、みたいな。ホンマ純粋な気持ちでサッカーやれてるから、凄い幸せやね」。

 ふざけているようで、マジメ。柔軟なようで、頑固。ベテランでいて、永遠の若手。一言では表現し尽くせない稀有なキャラクター。千両役者を地で行く播戸竜二の“二回り目”には、果たして何が待っているのか。果たして何を成し遂げてくれるのか。我々もそれが今から楽しみでならない。

■執筆者紹介:
土屋雅史
「(株)ジェイ・スポーツに勤務。群馬県立高崎高3年時にはインターハイで全国ベスト8に入り、大会優秀選手に選出。著書に「メッシはマラドーナを超えられるか」(亘崇詞氏との共著・中公新書ラクレ)。」
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SEVENDAYS FOOTBALLDAY by 土屋雅史

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