『SEVENDAYS FOOTBALLDAY』:STAY GOLD(青森山田高・小松慧)
ゲキサカ / 2018年4月14日 9時40分
「気持ちは自分が一番入っていたと思います。そこだけは負けられないし、“アイツら”にはやっぱり負けられないので、そういうのは大事にしてやっていました。でも、何もしていないですね。やっぱり結果が大事で、フォワードは点を取ってナンボですから」。交替を命じられ、ピッチから引き揚げてくる姿に、わかりやすく自身に対する不満が滲む。チームは0-4で快勝を収めたものの、やっと手繰り寄せた“古巣対決”は不完全燃焼のまま、その1度目を終えることとなった。
「決定機は肩に当たってズレましたけど、アレも飛ばなくてもチョンってやれば済む話でしたし、状況や周りが見えていないのが課題なので、まだまだヘタクソだなと思いました」「あの時間帯で2点目を取ることが、チームにとってどれだけ大事なことか身を持って感じたので、1点の重みをもっと持ってやりたいと思います」。試合後は反省ばかりが口を衝く中で、既にJ3でのプレーも経験し、FC東京U-18のディフェンスリーダーを務める草住晃之介とのマッチアップに話題が向いた。「晃之介とのマッチアップでも、『もっとやらなきゃダメだな』と感じましたし、逆にやれた部分も多少はあったので、そこを大事にしながら、逆にやれない部分をもっと埋めていかないといけないですね」。この2年の成長をぶつけ合った小松と“アイツら”にしかわからない空間が、味の素スタジアム西競技場のグラウンドには確かに存在していたようだ。
ここまで味わってきた数々の苦難は、彼の危機感を良い意味で煽ってくれる。「『気持ちは出せたかな』と思うんですけど、点を取らないと需要がなくなっちゃうので、やっぱり点を取れる選手になりたいと思います」。憧れの選手は中山雅史。日本が誇る名ストライカーに、自分のスタイルを重ね合わせている。「あの熱いプレーに心を打たれる人も多いと思うので、ああいうダイナミックな、顔面から突っ込んででも点を取れるような選手になっていきたいです」。この気持ちがある限り、これまで通り前へ前へと突き進んでいく日々が、小松を待っていることに疑いの余地はない。今後も少しずつ増えていくであろう、さらなる“名誉の負傷”と共に。
開幕戦のスタンドでは、FC東京の育成部長を務める奥原がピッチを見つめていた。かつての恩師の眼に、かつての教え子の姿はどのように映ったのだろうか。「自分みたいなヘタクソでは、プロということを明確な目標として口に出せる選手ではまだないですね。プロになりたい気持ちはありますけど、それが行動に伴っているかと言ったら、まだまだ足りないと思うので、まずは“プロになる”ことを目標に掲げられる選手にもなっていかないとダメかなと思います」。アグレッシブな姿勢と、飽くなき純粋な向上心を懐に携え、目標への輝く道を力強く見据える小松慧の時計の針は再び、少しずつ、確実に動き出している。
■執筆者紹介:
土屋雅史
「(株)ジェイ・スポーツに勤務。群馬県立高崎高3年時にはインターハイで全国ベスト8に入り、大会優秀選手に選出。著書に「メッシはマラドーナを超えられるか」(亘崇詞氏との共著・中公新書ラクレ)。」
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