「まだまだです、あいつは」 恩師の下で急成長のMF松本泰志、“凄すぎる二人”を超えて東京五輪へ
ゲキサカ / 2018年6月8日 8時21分
[6.7 トゥーロン国際大会7位決定戦 U-21日本 1-0 U-21トーゴ フランス]
「あーーー、いや、いやいや、まだまだですよ。まだまだです、あいつは」
U-21日本代表MF松本泰志(広島)が見せている進歩について、プロ1年目の松本を指導していた恩師でもある横内昭展監督代行に聞いてみると、にこやかな表情と共にそんな答えが返ってきた。その表情から言葉以上のニュアンスを感じたのは筆者だけではなかったはずだ。
松本は森保ジャパン発足後初の招集機会となった昨年12月のタイ遠征で初招集された選手であり、このときが全年代を通じて初めて日の丸を付ける機会だった。
「正直、緊張しています」
そんな初々しいコメントも残していたのだが、3月の南米遠征、そして今回のトゥーロン国際大会と機会を重ねるにつれて、ピッチ上でのプレーはもちろん、練習の合間に見せる表情や、代表に対する考え方の部分にも変化が観られるようになっている。
「さすがに代表の雰囲気には慣れました。本当に楽しいですし、残りたいという気持ちは当然強くなっています」
ピッチ上でも強気の選択が増えてきた。横内監督代行が「たまーに、見せますよね。たまーに」と評する効果的な縦パスは、U-21トーゴ代表との7位決定戦でも冴えていた。1点目を直接演出したのはMF三笘薫(筑波大)のスルーパスとFW三好康児(札幌)の技巧的フィニッシュワークだったが、その一歩前に鋭く縦パスを入れたのは松本である。U-19ポルトガル代表戦でも見られたプレーなので、別に偶然の産物ではあるまい。
昌平高時代はトップ下やサイドの攻撃的MFだったが、広島加入後はボランチやセンターバックを経験。視野を広げてプレーすることを求められる中で「(高校時代の相棒である)MF針谷岳晃(磐田)の凄さがわかった」などと語っていたこともあった。ただ、それでも貪欲かつ着実に新しい役割に順応し、自身の中に新境地を開拓してきた。
元々が攻撃的な選手だけに手探りの部分もあった守備面でも着実に成長。今大会も破綻なく忠実に守れる力があることを見せ、横内監督代行も「タフさのところ、パラグアイ遠征のときもそうでしたが、最後まで走り切る、出し切るというところが出てきた」と評価する。
本人も指揮官も強調するとおり、ビルドアップに絡む戦術的な部分を含めて、まだまだ発展途上なのは間違いない。また、この大会で本人は「フィジカル面がまだまだ足りない」と筋力トレーニングの必要性を痛感しており、対世界という意味ではまだまだ力不足のところはある。そもそも今回も辞退者が出たことによる追加招集である。ただ、プロ入り後の成長度合いという意味で言えば、この年代でも指折りの存在であることは間違いない。
大会後、指揮官は選手たちに「レギュラーを奪え!」というまっすぐなメッセージを送った。松本の所属する広島のボランチといえば、MF青山敏弘とMF稲垣祥の名コンビの活躍が光っており、松本も「凄すぎる二人」と敬意を欠かさない。だが、もしも松本がこの二人の牙城を崩すほどの成長を遂げるようなら、東京五輪の最終メンバーリストに松本の名前が載ることも、サプライズではなくなっていることだろう。
(取材・文 川端暁彦)●第46回トゥーロン国際大会2018特集
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