1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. スポーツ
  4. サッカー

『SEVENDAYS FOOTBALLDAY』:うたかたの夢(帝京高・三浦颯太)

ゲキサカ / 2018年11月24日 7時34分

「最初から駒澤さんのサッカーにお付き合いしちゃって、なかなか自分たちのペースにできなかった」と三浦も振り返った帝京の動きが重い。前半7分に先制を許すと、26分にも失点。2点のビハインドを背負ってしまう。日比監督も準決勝で同じ点差を引っ繰り返す要因となった2人の選手を、前半の内に途中投入したものの、駒澤大高の堅い守備陣をこじ開け切れない。「みんなちっちゃくなっちゃってましたね」と三浦。真価を問われるシチュエーションの下で、残された40分間のピッチへ走り出す。

 後半21分。帝京が1点を返す。萩原颯都のクロスを三浦がダイレクトで落とし、粘った佐々木のシュートは鮮やかにゴールネットを揺らす。中学時代から6年を一緒に過ごしてきた3人での反撃弾。三浦も「良い時間に1点が取れて、今まで追い付いてきているので、流れが来ている」手応えを感じていた。あと1点。明日もこの仲間たちとボールを蹴るためには、少なくともあと1点…

 タイムアップのホイッスルが駒沢陸上競技場の上空に吸い込まれる。「『ああ、終わっちゃったなあ』って。それだけで、他にはなにも考えていなかったです」。それはまるで水に浮かぶ“うたかた”のように、掴み掛けては消え、消えては掴み掛けていた“夢”が、とうとう消えてなくなった瞬間。三浦颯太は、ただそこに立ち尽くしていた。

「最後まで、表彰式までちゃんとやろうとは思っていました」。毅然と、顔を上げて、戦い終えたばかりのライバルへ優勝旗が渡る光景を見つめる。声を嗄らした応援団の元へ挨拶に行き、メインスタンドにいた知人とも言葉を交わす。淡々と。粛々と。自分のなすべきことを1つ1つ消化し終えた8番は、静かにロッカールームへ帰っていった。

 30分は経っただろうか。三浦がミックスゾーンへ姿を現す。落胆の色は隠せないが、想像していたよりはサバサバした表情だった。「全国に行く力はたぶんあったと思うんですよね。やっぱり1人1人の、この大舞台でもちょっとした“ちっちゃく”ならない精神力とか、普段の練習の積み重ねが、ちょっと足りなかったのかなと終わってから思います」。一度は敗因を絞り出したが、少しあって「何が足りなかったのか、ちょっとわからなかったです」と本音を覗かせる。ずっとずっと追い求めてきた目標に、あとわずかの所で届かなかったのだ。そちらの方が極めて率直な想いだったに違いない。

 長くて短かった3年間に話題が及ぶ。「1年生から出させてもらっていたことで、結構注目もしてもらっていて、自分は逆に『やってやろう』みたいな感じでした」「自分としてはいろいろな能力を伸ばしてもらって、良いチームメイトにも囲まれて、充実していたと思います」仲間への感謝が口を衝く。それでもこの気持ちは覆い隠せない。「最後の最後はやっぱり結果が欲しかったです…」。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください