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『SEVENDAYS FOOTBALLDAY』:プレッシャー(前橋育英高・若月輝)

ゲキサカ / 2018年11月28日 13時17分

「3試合くらいケガとか関係なく出られなくて、去年からメンバーに入っていましたし、自分の代でスタメンから外れること自体が今までのサッカー人生でなかったので、正直凄く悔しくて、監督にも『なんで出られないんですか?』と聞いたくらいでした」。焦りがなかったはずがない。新潟から単身で前橋育英の門を叩いたのも、自分の代の選手権で日本一を勝ち獲るという大きな目標があったからだ。だが、キャプテンとしての責任感が自我を抑制する。指揮官の「いつかチャンスが来るから」という言葉を信じ、今の自分にできることを1つ1つ探していく。

 結果的に若月はスタメンを再び取り戻した。「監督もたぶん意図して出さなかったと思うんですけど」、詳しいことは聞いていない。「いろいろ想うことはあった中で、逆に試合に出れないことでチームを客観視できましたし、今自分にできることを考えたりする時間ができたので、今となってはその時間が良い時間だったかなと思っています」。決して順風満帆なことばかりではなかった日々を経て、いよいよ高校最後の大会がやってくる。

 11月18日。選手権予選群馬県大会決勝。相手はやはり因縁の桐生一。舞台の重みは、そのまま襲い掛かるプレッシャーの重みに比例する。「いつも基本的に1人でストレッチとかしているんですけど、もう気持ちが緊張とプレッシャーでいっぱいいっぱいになっちゃって。『みんなと同じ空気にいるとダメだな』と思って、なるべく心を落ち着かせようと30分くらいみんなから1人だけ離れて、歩いたりストレッチしたりいろいろやっていたんですけど、それでもなかなかいつも通りに戻らなくて、そのまま試合に入って、という感じでした」。押し潰されそうな重圧を抱えたまま、若月はキックオフの時を迎えた。

その刹那。「自分が良いボールを入れれば、絶対に決めてくれると思っていた」という。1-1で突入した後半アディショナルタイム。若月の足元へボールが入る。「『当たり損ねたな』という感じ」のクロスを室井彗佑が収め、渾身のシュートはゴールネットを揺らす。それから残されたわずかな時間を慎重に、慎重に潰していくと、待ち侘びたホイッスルの音が耳に届いた。「力が抜けたというか、この試合に本当に懸けていましたし、いろいろな人の想いを背負って戦った試合だったので、本当に嬉しくて泣いちゃいました」。涙でチームメイトの喜ぶ姿が曇って見える。想いを託された様々な人たちの顔が脳裏に浮かぶ。「周りには言ってないですけど」と前置きしながら、「自分の中ではプレッシャーを感じたりして、背負っていた部分があったので、1つ解放されたかなと思います」とキャプテンは晴れやかな笑顔を浮かべた。

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