1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. スポーツ
  4. サッカー

『SEVENDAYS FOOTBALLDAY』:“42+3”の責任(東京ヴェルディ・柴崎貴広)

ゲキサカ / 2018年12月11日 12時5分

 2018年12月2日。J1参入プレーオフ2回戦。大宮アルディージャを10人で下した1回戦を経て、意気上がるヴェルディは横浜FCと対峙する。シーズンの順位は前者が6位で後者が3位。ヴェルディは勝利がJ1クラブとの決戦を引き寄せる唯一の条件になる。ウォーミングアップに出てきた柴崎は、かつて3シーズンをホームとして過ごした“三ツ沢”に感慨を覚えていた。「このスタジアムの雰囲気が好きですし、人もいつもより入っているので良い雰囲気でしたね」。古巣対戦にも自らの役割を整理してゲームに向かう。

 後半アディショナルタイムも6分を回っていた。スコアはまだ動いていない。このままなら敗退が決まる状況で得たヴェルディのコーナーキック。佐藤優平が描いた軌道に、緑ではなくグレーのユニフォームがヘディングで呼応すると、南雄太が懸命に弾いたボールをドウグラス・ヴィエイラがゴールネットへ流し込む。「最近ああいう形をキーパーでも練習していたので、『練習通りだな』ってみんなで話していたんです。ベタな話ですけど、サッカーの神様が見ててくれたみたいな感じでしたね」。リスク覚悟で上がって行ったキーパーが得点に絡む劇的な決勝点をこう表現した柴崎が、ゴールの瞬間を見届けていたのはアップエリアだった。

 殊勲の上福元直人が報道陣に囲まれる傍らで、柴崎は静かにミックスゾーンへ姿を見せる。「この場所で、こういう想いができて、自分のサッカー人生の中で凄く思い出に残る1試合だったなと感じていますし、自分は出ていないですけど、『サッカーっていいなあ』って改めて思いました」「一緒に練習している選手が活躍するのは自分にとっても良い刺激になるので、本当に良い1日というか、今年1年の中でも良い日だったなと思います」。淡々と、飄々と、それでいて穏やかに、会話が進む。

 2018年シーズン。柴崎にリーグ戦の出場機会は1度も訪れなかった。だが、プレーオフの2試合も含めると、44試合のすべてでベンチに入ってチームを支えてきた。「試合に出ている方が簡単というのはありますね(笑) コンディションはかなり難しいです。でも、健康にサッカーができているのが幸せですね。だから… 良い1年ですよ」。その言葉に嘘はないと思う。それでも聞かずにはいられない。「ああいう昨年があって、こういう今年がある中で、どうしてそんなに自分を保てるんですか?」と。

 返ってきた口調には少しの淀みもなかった。「常にやるのがプロとしての義務だと思いますし、それがプロですから。プロとプロじゃない人たちと何が違うかと言ったら、やっぱり“責任”があるかないかで、もちろん背負っているものがありますし、それはサポーターの想いも、家族も、ヴェルディの歴史もそうですし、来年は50周年ということで今年はどういう形でもJ1に上がりたいと会社も頑張っていますし、それが1つになって今は結果が出ているのかなって。だから、もちろん出れないのは悔しいですけど、そんなこと言ってられないですよ。まず勝つことが第一優先でやっているので、今日も勝てて良かったですし、その悔しさはオフで来年に向けてやればいいだけですし、試合に出れなくても上手くなれるので、そう思ってやっているだけです」。試合に出るか、出ないか。そんな次元を超えた様々な“責任”が柴崎を衝き動かしていた。そして正真正銘のラストゲーム、クラブの未来を変え得る“42+3”試合目がやってくる。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください