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『SEVENDAYS FOOTBALLDAY』:“42+3”の責任(東京ヴェルディ・柴崎貴広)

ゲキサカ / 2018年12月11日 12時5分

 今シーズンの終焉を告げる笛の音がヤマハスタジアムに鳴り響く。その瞬間。柴崎貴広はベンチのすぐ横で、ピッチに佇むチームメイトを見つめていた。12月8日。J1参入プレーオフ決定戦。ヴェルディはジュビロ磐田に0-2で敗れ、11年ぶりの“復帰”は露と消える。他の選手がベンチコートに身を包む中、緑のウェアに黄色いビブスを付け、まるでいつでもピッチへ飛び出して行けたかのような格好のまま、うつむく選手たちに声を掛けていく。井上潮音の頭を優しく叩き、上福元を握手で労い、ロティーナ監督と短く抱き合う。サポーターで埋まったゴール裏に、メインスタンドに一礼を終え、もう一度だけゴール裏へ視線を向けて、柴崎はロッカールームへ姿を消した。

 大勢のメディアでごった返す取材エリアに柴崎が現れる。「細かい所の差があったなと。基本的なボールを止める蹴るとか、大事な所でミスをしないとか、『差があるなあ』と感じましたし、今日みんな感じたことがあると思うので、それを持ち帰ってチームとしても個人としても、良い時間にしなくてはと思います」。終わったばかりの90分間を振り返っていく。淡々と、飄々と。いつものスタンスはこの日もまったく変わらなかった。

 今年も新たな“景色”を見ることができたのか、聞いてみる。「去年とまた違う良い“景色”を見れましたし、やっぱり何度でも大きな、綺麗な、凄い“景色”を見たくなるので、だから頑張れるのかなと。また、“それ”を見せてあげたいというのもあるので、若い時はそんなことは考えなかったですけど、ベテランの人たちはそうだったんだなと思いますね」。ある表現が気になって質問する。「そういう“景色”を『見せてあげたい』のは誰ですか?」。

 その対象はこちらの想像を遥かに超えたものだった。「すべてと言ったら大袈裟かもしれないですけど、今いる選手やサポーターだけではなくて、まだヴェルディを知らない人たちにも、これから好きになってくれる人がいるんだったら、そういう人にも見せてあげたいですし、本当にチームを発展させたいというのが一番で、今はいろいろな人にヴェルディを知ってもらいたいんです」。14シーズンを過ごしてきたクラブへ注ぐ愛情は、そう簡単に誰もが太刀打ちできる質量ではない。

 最後の質問は決めていた。「“試合に出る苦しみ”と“試合に出られない苦しみ”への想いは、今年で変化しましたか?」。一瞬だけ何もない天井に目をやった柴崎は、噛み締めるように語ってくれた。「どっちも結局は苦しいんですけど、何だろうなあ… 逃げるタイミングはたくさんありましたし、手を抜くのも簡単なんです。でも、苦しいけどサッカーが好きだから、何でも頑張ってできちゃうのかなっていうのは、つくづく思いました。まあ、家族もいますしね(笑) なので、どんな状況でも少しでも長くやりたいし、『個人の成績よりもまずはヴェルディが』という気持ちが今は本当に強いので、現役でいる内にJ1へもう一度戻りたいなと思います。だから、全部が良い“苦しみ”なのかなと。サッカーをやめてからの方が絶対に苦しいでしょうしね。だから、もう少し“苦しみ”を楽しみたいなと思います」。

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