『SEVENDAYS FOOTBALLDAY』:一家団欒(長崎総科大附高・一倉加偉、一倉李基)
ゲキサカ / 2019年1月3日 7時24分
まず驚いたのは、そのトレーニング量。「来た時は本当にもう走りが大変で、『まだ走るんか…』っていう所からまた走るので、それは想像以上でした」と話す加偉は、「でも、昔の国見に比べれば全然緩いらしいです(笑)」と続けたものの、それでも全国トップクラスのハードな練習に何とか必死で食らい付いていく。
加えて、慣れない寮生活も負担は小さくなかった。「洗濯だったり、自分のことは自分でやらないといけないので、親のありがたみが本当にわかりました。一緒の時はわからなかったです」(李基)。サッカーに、勉強に、寮生活に。16歳の毎日に疲労が積み重なっていく。ただ、簡単に投げ出す訳にはいかない。一切の反対もせず、長崎へと送り出してくれた家族のために、折れそうな心を奮い立たせる。掲げた目標は「全国に2人で出ること」。明確な未来のイメージへ向かい、加偉と李基は日々を真摯に過ごしていく。
1年時と2年時の選手権は、チームこそ全国切符を手にしたものの、加偉と李基は共にメンバー外。最高学年になり、加偉は右サイドバックとして頭角を現すも、李基はケガもあってなかなか出場機会を得られない。李基が戦線に復帰し、臨んだ総体予選ではまさかの初戦敗退。目標を叶えるためのチャンスは、あとわずか1つの大会だけになってしまっていた。
「毎日試合をやって、試合の後にもいっぱい走って、本当に鍛えられました」と加偉も苦笑した夏遠征を経て、迎えた最後の選手権予選。初戦は2人ともスタメンに名を連ねたが、「調子が悪くて、それ以降の県予選は準決勝の後半最後くらいしか出れなくて、悔しかったです」と李基。チームは盤石の戦いぶりで長崎を制しながら、弟は自身の不甲斐なさを痛感させられる。
だが、結果的にその悔しさはパフォーマンスに好影響を与えていく。県予選の決勝以降で復調を果たし、「全国までに練習試合とかでは出てたので、本番でも出る可能性はあるなと思っていました」と李基。すると、大事な全国の初戦へ挑む長崎総科大附のスタメン表には、“一倉”の文字が2つ書き込まれる。「やっぱり2人で出るのは特別な想いはありますね」(李基)。白と黒が均等にあしらわれたユニフォームへ身を包み、6番と20番がNACK5スタジアム大宮のピッチへ歩みを進めていく。
加偉はいつもと逆の左サイドバック。李基はドイスボランチの左。両チームが慎重に立ち上がったゲームは、静かに時間が経過していく。「相手は球際が強くて、自分たちも負けないように球際で勝てばチャンスが来るって思ってました」(李基)「ディフェンスラインは声を切らさずに、集中をずっと続けていました」(加偉)。大きなチャンスはお互いに創れないまま、最初の40分間はにらみ合う。
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