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『SEVENDAYS FOOTBALLDAY』:誇りを胸に(流通経済大柏高・吉田俊輔)

ゲキサカ / 2019年1月18日 20時22分

 負けたばかりの仲間たちが、俯きながら自分たちの下に歩いてくる。吉田は最後の挨拶に向けてゆっくりと座席から立ち上がった。声を掛けようと決めていた選手の名前を呼ぶ。シーズン途中からキャプテンの大役を任され、悩んでいる姿も見てきただけに、左部へ感謝の気持ちを伝えたかった。「カイト!カイト!」。聞こえていないはずがない。それでも、こちらに顔を向けようとはしない。その時、悟った。「ああ、泣いてるんだな」と。挨拶を終えた背中を見送る。スタンドとピッチの距離が、やけにもどかしかった。

 夜になって、左部からメッセージが届いた。スマホの画面に『ごめんな』という言葉が浮かぶ。「謝ってきたので、『頼むから謝らないで』みたいなやり取りをして。『謝らないでくれよ』と。『オマエらのサッカー、最高だったよ。オマエは俺の誇りだよ』って返しました」。精一杯頑張ってきたのは十分過ぎる程に知っている。謝る必要なんてない。液晶の文字に託した感謝の念は、しっかり伝わっただろうか。

 決して思い描いていた通りの3年間ではなかった。楽しいことより、悔しいことやツラいことの方が遥かに多かった。でも、これだけは胸を張って言える。いつもそばには最高の仲間たちがいてくれた。「今年の3年生は本当にカッコつけたら絆は結構深かったんじゃないかなと。カッコつけたらですけど(笑)、団結力はあったと思います。みんなには本当に感謝しかないし、最高でしたよ、3年間。幸せでした」。吉田はそう言い切ってから、小さく笑った。

 瞼を閉じてスタンドからの景色を思い浮かべると、みんなで歌ったあの曲が、頭の中に何度も、何度も甦る。『流経のこころ 魂に響かせろ この歌 勝利を信じ 共に進もう 誇りを胸に』。流経大柏での3年間で、かけがえのない仲間と築き上げてきた誇りを胸に、吉田俊輔が歩み出していく新たな未来へ幸多からんことを。

■執筆者紹介:
土屋雅史
「(株)ジェイ・スポーツに勤務。群馬県立高崎高3年時にはインターハイで全国ベスト8に入り、大会優秀選手に選出。著書に「メッシはマラドーナを超えられるか」(亘崇詞氏との共著・中公新書ラクレ)。」
▼関連リンク
●【特設】高校選手権2018
SEVENDAYS FOOTBALLDAY by 土屋雅史

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