1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. スポーツ
  4. サッカー

『SEVENDAYS FOOTBALLDAY』:Fly Me to the Moon(ファジアーノ岡山U-18・金田飛鳥)

ゲキサカ / 2019年3月20日 17時28分

 金田は淡々とした口調で当時を振り返る。「最初は『ずっと野球をやろう』と思っていたんですけど、坊主にするのが嫌だったのと、普通に仲の良い友達が全員『中学校のチームでサッカーやろうや』みたいになって、みんなで入った感じです」。それにしても唐突な転向だが、「小学校の昼休みとか、長い休み時間に結構サッカーはやってて、『何か楽しいな』と思っていたんです」と本人。かくして彼の日常は9人で手を使う競技から、11人で足を使う競技へとシフトしていった。

 才覚はすぐに現れた。持って生まれたスピードが、新たな挑戦へ自らを馴染ませていく。すると、所属するモンタリオ美作SCは岡山県2部リーグを戦っていた中で、この先の進路を考え始めた中学3年時に、ファジアーノの下山雅司アカデミーダイレクターから声が掛かる。「下山さんが見に来ていた時に『来てみんか?』って言われて。セレクションも1次は行かなくて、2次から行って、それで受かったみたいな感じでした」。

 もちろん「受かりたい」と思って挑んだセレクション。だが、実際に受かってはみたものの、進学する岡山学芸館高のサッカー部とファジアーノのU-18という、2つの選択肢の狭間で心は揺れる。そんな15歳の背中を優しく押してくれたのは、3年間を見届けてきた指導者だった。「『ファジアーノが一番プロに近いから』とクラブの監督に言われて、『頑張ってみるか』と覚悟を決めた感じです」。2017年4月。金田はプロへと直結するJクラブの下部組織へと、身を投じることとなった。

「最初はメッチャ大変で、『来る場所を間違えたな』と思いました」。一言で表現すれば、レベルが違った。「足元で受けても10回に1回ぐらい相手を剥がせるかぐらいで、もう先輩とかも怖くて、怒られて、『やめたい』とか思っていたんです」。自信のあったスピードを出すことすらままならない。楽しかったはずのサッカーが、いつの間にか楽しめなくなっていた。来るであろう“明日”を終わらせるべく、「やめたい」気持ちに何度も支配されていく。

 それでも、“明日”は終わらなかった。あと一歩の所で踏みとどまらせたのは家族の存在。実は彼が小学校高学年の頃、金田家にはある困難が立ちはだかっていた。その困難をみんなで乗り越えようとした道の先に、飛鳥という希望が、サッカーという希望が、家族に灯った経緯があった。「お母さんもいろいろと僕のやりたいことをやらせてくれていたので、『申し訳ない』って気持ちが強くなってきて、『自分から弱音とか吐いたらダメだな』と思ったので、そこから“やってきた”みたいな感じです」。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください