『SEVENDAYS FOOTBALLDAY』:Fly Me to the Moon(ファジアーノ岡山U-18・金田飛鳥)
ゲキサカ / 2019年3月20日 17時28分
話を聞く少し前。こちらに声を掛けられ、立ち上がって歩き出した時に複数のチームメイトから、「メッチャ芝付いてるぞ」と笑い声が。パンツに芝生が大量に付着していたが、本人はどこ吹く風。「メッチャ付いてますか?ここ、メッチャ付きますね。静電気が凄いです」と表情も変えずに話す稀有な雰囲気も含め、『好かれる方』だという自己分析は、おそらく外れていない。「人間的には結構“天然”です」と笑った山田の言葉が、彼を表現するために最適のフレーズだと理解することは、短い会話の中からでも決して難しくはないはずだ。
桐光学園戦は結局3-4で惜敗。最終戦の神戸弘陵高戦は2-2で引き分け、ファジアーノは2勝1分け3敗という戦績でフィニッシュ。金田はチームトップの5得点を記録し、一定のパフォーマンスは発揮したものの、「良い時と悪い時の波がはっきりしているので、それもそれで良い時があるんだったらいいかなと思いますけど(笑)、毎試合1点は取りたかったです」とも。収穫と課題を手にした3日間を糧に、福島のJヴィレッジで開催される大会へ臨み、いよいよ開幕する新シーズンのプリンスリーグへと向かっていく。
以前のこと。トップチームの練習に参加した際、1人の選手が気になった。「福元友哉選手が好きなんです。プレースタイルもゴリゴリで足も速いし、しかもその人と一緒に2トップも組めたんです。3人に囲まれてもワンタッチとかで剥がして、凄く守備もするし、優しかったので、ああいう人になりたいなって思います」。身近なお手本を得て、その先の目標への想いも強まったようだ。「トップの選手は体が強いし、判断も速いし、背負っているものが違うというか、みんな死ぬ気でやっていてメッチャ刺激になったんですけど、『自分もそこに入ってやってみたいな』って気持ちはあるので、諦めずに頑張ってます」。
服部監督は金田について、こういう言葉を残している。「もう自分の持っているもので勝負して欲しいですね。スピードで最後に決め切る能力を生かしつつ、もっと質を上げてもらえればと。たぶん『これをやる』という整理ができてきたのかなと感じますし、サッカーを始めたのが遅い分、まだまだ伸びると思うんですよね。これからも楽しみです」。
この関東遠征では改めてチームへの想いを再確認した。「全国的に見ても『ファジアーノってJ2だよね』みたいな感じだから、実際今回の対戦相手も『コレで負けたらどうしよう』とか言っていて、そういうのが悔しいので、『今年のファジアーノは強いな』って言われるようになりたいです」。そのためには少し不思議な雰囲気を纏った、それでいて何とも魅力的な13番が覚醒するか否かが、小さくない鍵を握っているような気がしてならない。そして、最初は何となく歩き始めたサッカーという道程を、周囲の厚い協力を得ながら切り開いてきた彼なら、その瞬間を手繰り寄せるだけの可能性を十分に秘めているのではないだろうか。
広く果てしない大空へと羽ばたく時は迫っている。ユニフォームに縫い付けられたエンブレムのように。自らに与えられた名前のように。「プリンスで結果を残したり、今を頑張ったりして、プロに行きたいなという気持ちはあります」。金田飛鳥の未来はきっと、いつでも彼自身の手の中にある。
■執筆者紹介:
土屋雅史
「(株)ジェイ・スポーツに勤務。群馬県立高崎高3年時にはインターハイで全国ベスト8に入り、大会優秀選手に選出。著書に「メッシはマラドーナを超えられるか」(亘崇詞氏との共著・中公新書ラクレ)。」
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SEVENDAYS FOOTBALLDAY by 土屋雅史
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