『SEVENDAYS FOOTBALLDAY』:初心(奈良クラブ・有薗真吾)
ゲキサカ / 2019年3月25日 20時44分
東京のユースサッカーの魅力、注目ポイントや国内外サッカーのトピックなどを紹介するコラム、「SEVENDAYS FOOTBALLDAY」
10年の時を重ねてきたからこそ、その響きがあの頃を鮮明に思い出させてくれる。ただ前だけを見つめて、ただ上だけを見据えて、何者かになりたいと願っていた自分を。「“初心”の気持ちというのは凄く大事だと思ったので、もう一度この番号を付けたかったんです」。あの頃と同じ32番を背負い、歴史ある古都の地で再び“初心”を呼び起こしている有薗真吾は今、サッカーと共に生きる幸せを噛み締めながら日々を過ごしている。
3月24日。武蔵野市立武蔵野陸上競技場。日本フットボールリーグ第2節。1,400人を超える観衆はキックオフの時を待っていた。東京武蔵野シティFCと対峙すべく、アウェイへ乗り込んできたのは奈良クラブ。Jリーグ加盟への意思を表明しており、既に2015年にJ3クラブライセンスを取得している彼らにとって、JFLで5年目となる今シーズンは勝負の年。「サッカーを変える 人を変える 奈良を変える」を新たなビジョンとして掲げ、数々の斬新な取り組みにトライしている注目の新進クラブだ。
その奈良クラブのディフェンスリーダーとして、スタメンリストの“32”という数字の横に名前を書き込まれたのが有薗真吾。チーム最年長の33歳。ザスパクサツ群馬、FC町田ゼルビア、ブラウブリッツ秋田、ギラヴァンツ北九州と4つのJクラブを渡り歩き、今シーズンから自身初となるJFLのステージへ挑戦することとなったが、その辿っているキャリアは余人に想像できない程の波乱を含んできたと言っていいだろう。
もともとは薩摩隼人。大迫勇也の母校としても知られる鹿児島城西高に進学したものの、時の九州最南端は鹿児島実高の天下。目立った成績を残すことは叶わず、福岡経済大学(現・日本経済大学)在学時も全国大会や選抜とは無縁。それでもサッカーへの想いは断ち切れず、2008年に当時はJリーグのサテライトリーグを主戦場に置いていたザスパ草津U-23へと加入。クラブ創設当時の理念を継承するチームの慣習にならい、アマチュア登録の選手として草津温泉で働きながらサッカーを続ける選択肢に身を投じた。
とはいえ有薗の加入当時で、U-23からトップチームへ昇格した選手はごくごく少数。「職場の方々もいろいろな方がいて、いろいろな支えがあって、そういう面では本当に恵まれていました」と本人は当時を表現するものの、“本業”のサッカーにおいては、先の見えない日々に不安が募る。結局1年間の活動を終えた時点で、地元に近い九州のあるクラブのセレクションを受けることを決意。「『他の所にセレクションに行くのであれば、しっかりけじめを付けて』という形だったので、一度草津を離れました」。有薗と草津の縁はいったん終止符を見る。
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