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『SEVENDAYS FOOTBALLDAY』:光の射す方へ(関東一高・佐藤誠也)

ゲキサカ / 2019年5月15日 19時50分

 その中で改めて見えてきたのは、個人の結果とチームの結果は一致するはずだという信念。「チームが勝てば自分も評価されるので、今日はチームのためにと思ってやりました」。どんなにあがいても感じることのできなかった一筋の光が、ようやく佐藤にわずかながら差し込んでくる。

 4月13日。関東大会予選2回戦。試合は1-1のまま、大詰めを迎えていた。成立学園高が後半に先制するも、関東一は残り10分で貝瀬敦のゴールが飛び出して同点に。延長戦もお互いに得点は生まれず、既に成立学園はPK戦に備えてゴールキーパーの交替に着手していた。そんな中で突入した延長後半のアディショナルタイムに、関東一はフリーキックを獲得する。ゴールまでの距離は約30メートル。スポットに立った佐藤はその時、不思議と予感があったという。

「練習ではそんなに良いボールとか蹴れないんですけど、本当に不安とかなく、自信を持って蹴れるなって」。既に夕闇に包まれたピッチは、カクテル光線に照らされていた。すべての耳目が集まる中、短い助走から佐藤が右足を振るうと、壁を越えた美しい軌道は、完璧な弧を描いて左スミのゴールネットへ吸い込まれる。一瞬すべての時間が止まり、すぐさま爆発的な咆哮が関東一を包むのと同時に、主審はタイムアップのホイッスルを吹き鳴らした。

「『壁が高いな』と思ったんですけど、ちょっと落とす感じで蹴れば行けるかなと。イメージはあったので、あまり考え過ぎないで蹴りました」。殊勲の8番を中心に、幾重にも渡って歓喜の輪ができる。まさに“サヨナラゴール”。「シビれました。いやあ、こんな気持ちいい感じを味わえたのは久々で、いつも先輩方にそういう気持ちを味わわせてもらっていたので、今回は自分がそうなれて良かったです」。いつもは冷静な佐藤も興奮を隠し切れない様子が、こちらにも伝わってくる。

 自身の役割についても、ポジティブな割り切りが進んでいた。「いろいろなポジションを経験することで、自分が“真ん中”をやった時にどういうタイミングで関わって欲しいのかとか、違うポジションからの目線でも考えられるようになったので、メンタル的にも少し余裕を持ってやれていますし、一番は『自分が最後にチームをしっかり勝たせる』と思って試合に臨めているのが、心の余裕に繋がっていると思います」。心の余裕はいろいろな迷いをクリアにしていく。今や佐藤は忘れ掛けていた瞼の開け方を、確かに思い出し始めていた。

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