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『SEVENDAYS FOOTBALLDAY』:約束(大成高・金井渉)

ゲキサカ / 2019年7月1日 11時45分

 前半9分に幸運な形で先制したものの、6分後にミスが絡んで同点ゴールを許す。そこからはお互いにチャンスを創り切れない時間が続くも、攻撃の時間が長いのは帝京。金井も「だいぶキツかったですね、ずっと走り回されていたので、キツいのはあったんですけど」と振り返りながら、「応援から『頑張れ!』という声がよく聞こえたので、自分も頑張れた所はありました」と言葉を続ける。

「いざ試合となったら頑張ってくれましたね」と“渉”に評された“陸人”も懸命に帝京攻撃陣へ食らい付く。“イライジャ金井”ならぬ“ダブル金井”の安定感も時間を追うごとに増していき、相手に決定的なシーンを創らせない。1-1で80分間が終了し、もつれ込んだ延長戦でもスコアは動かず。全国切符の行方はPK戦へと委ねられる。

 ここで思わぬ展開が訪れる。「練習では6番目のキッカーだったんですよ。でも、『5番目、誰が行く?』となった時に、急に自分が5番目になっちゃって(笑)、ちょっと焦りはあったんですけどね」。そういう時こそ、大仕事が回ってくるもの。9人がいずれも成功し、後攻の大成5番目。外したら負けというシチュエーションで、金井がキッカーとして登場する。

 帝京のGKはFC多摩で中学時代の3年間を共にした冨田篤弘。「PKを蹴る時に冨田とちょっと話して、『決めてやるからな』というのを伝えたんです」。スタジアム中の耳目が集まる中、“4番”が右足で蹴ったキックは冨田が右手で弾いたが、リバウンドはゆっくりとゴールの中に転がり込む。「一瞬『ヤベー!』と思いましたけど、その後のボールを見ていたら入ったので、とりあえず『セーフ…』と思いました」。PK戦はサドンデスへと突入する。

 展開が動いたのは9人目。帝京のキックがクロスバーに嫌われた。決めれば終わりの大成9人目は“5番”の金井陸人。短い助走から右スミを狙ったキックは、ゴールネットを確実に揺らす。ピッチも、ベンチも、スタンドも、歓喜の絶叫と涙に包まれる。「一番はイライジャに飛び付きたかったんですけど、『スタンドの方には行くな』と言われていたので」。ピッチで喜びを爆発させた後、ひとしきりの流れを終えてから金井がスタンドに向かうと、泣いている佐藤の姿が視界に飛び込んでくる。

「応援席に挨拶した後に、真っ先にイライジャの所に飛び込んで『全国で暴れよう』と話しました。彼も喜んで泣いていましたし、自分も喜び過ぎて本当に涙が出ちゃって。気持ちいいものですね」。 “4”と“4”の抱えてきた想いが混ざり合う。いつもと別々の場所で、いつもと別々の役割を自らに課して戦った彼らは、間違いなくこの日のことをいつまでも覚えていることだろう。

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