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『SEVENDAYS FOOTBALLDAY』:ミラクル・アゲイン(駿台学園高)

ゲキサカ / 2019年8月30日 19時41分

 8月22日。選手権一次予選決勝。駿台学園は再び崖っぷちに追い込まれていた。都立大山高に3-0で勝利したゲームを経て、都大会進出を懸けて激突したのは大森学園高。ここまでの2試合でなんと35得点を叩き出してきた難敵を前に、「自分たちが萎縮してしまって、気持ちが後ろに行ってしまっていた」と村雲。前半13分に先制点を、33分にも2点目を奪われ、早くも小さくないビハインドを背負うと、さらにポスト直撃のシュートを打たれるなど、何もできないままに最初の40分が終了する。

 ようやく訪れたハーフタイム。大森監督の檄が飛ぶ。「『これで終わっちゃうよ?引退しちゃうよ?どうする?こんなので引退になったらシャレにならないだろ』と。しかも後ろの意見と前の意見が合わなくてモメているから、『そういうことじゃなくて、もうこの状況は行くしかないだろ?』とハッパを掛けましたね」。村雲もその10分間をこう振り返る。「練習でやってきたことや夏合宿でやってきたこととか、そういうメンタリティの所、気持ちの所をとにかく言われました」。すると、6日前と同じく“瀬戸際”まで追い詰められた彼らに、ようやくスイッチが入る。

 後半4分。「自分は足元に自信がないので、得意な所を生かした強いヘディングをしようと思っていた」村雲が、コーナーキックから豪快な一撃を頭でゴールネットへ突き刺す。後半7分。「あそこの球際で負けないというのは、筋トレの成果が出たかなと思います。粘りました」と笑う三瓶が、三澤崚太のフィードにマーカーと競り合いながらも左足一閃。執念の同点弾をねじ込んでみせる。

「前半はアレで、後半がああなるから『もうオレ、コントローラー持ってねえわ』って(笑) 『ちょっとスイッチの押し所がわからん』っていう代なんですよね」。大森監督が独特の言い回しで苦悩を口にする。それでもスイッチが入った途端に追い付くあたりに、今年のチームが有する確かなポテンシャルが見え隠れしたことも間違いない。

 延長後半7分。偶然にもこの日で18歳になった男が試合を決める。途中出場の山下凛人が蹴ったコーナーキック。「あんまヘディングは得意じゃないんですけど、『どこかに当てれば入るかな』って。ちゃんとおでこに当たったんですよ!」。それまでヒールキックを筆頭にトリッキーなプレーを繰り返し、「全然パスも出せなくて、ドリブルでも仕掛けられなくて、自分的に調子が悪かった」と認める高橋が気持ちで押し込んだ、苦手なヘディングでの決勝バースデーゴール。「最後に決めたので結果オーライですね(笑)」と浮かべた屈託のない高橋の笑顔に、何とも言えない“駿台っぽさ”が滲む。今大会2度目の冷や汗とミラクルを体感し、彼らのセンシュケンはもう少し続くことになった。

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