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『SEVENDAYS FOOTBALLDAY』:ミラクル・アゲイン(駿台学園高)

ゲキサカ / 2019年8月30日 19時41分

「去年の子たちは『やられる前にやっちまえ』という勢いで勝ったんですけど、今年の子たちは『ヤベー。もうこれ以上下がれねえ』って所まで来てようやくスイッチが入って“オリャー”ってやると。『どっちしても“オリャー”ってなるんだったら最初からやれ』って言ってるんだけど、まあこんな感じですよね」。もはや開き直った感すらある大森監督の表情に、失礼ながら笑ってしまう。「この大会は何回心臓止まったかわからないもん。この前も止まったし、今日も止まったし。こういう形で楽しませる趣旨ではないんですけどね、ウチは。でも、本当に最後は気持ちがある子たちが引っ張ってくれたかなと思います」。

 選手たちが秘めた本来の力を知っているからこそ、2度のミラクルを目の当たりにして、もどかしさと頼もしさという2つの相反する想いを痛感しているのだろう。「去年はでき過ぎていた部分があったので、あの子たちもプレッシャーはあったと思いますし、何より僕が一番プレッシャーを感じているので。アハハハハ」。明るい指揮官の笑い声が8月の熱気と混じり合って溶ける。あるいは今年のチームの“コントローラー”は、最後まで操作できないのかもしれない。けれど、きっとそれも指導者の醍醐味だ。いつ入るかわからないスイッチは、彼らを想像よりさらなる高みへと連れて行く可能性だってある。

「比べられるのはちょっと嫌ですね。今年は“集合写真”もまだみんなぎこちない感じがあって(笑)」。去年のチームでレギュラーを張っていた中村海知はそう語りつつ、今年のチームが果たすべき役目も十分に理解している。「去年の自分は先輩たちに引っ張ってもらってああいう良い光景を見せてもらえたので、次は自分たちが後輩たちに良い経験をさせてあげたいですね」。

 一次予選突破を決めた試合後。応援スタンドをバックに背負った駿台学園の選手たちが整列すると、カメラマンがシャッターを切る。通常モードでおとなしく撮られた“1枚目”の後が真骨頂。それぞれが思い思いのポーズを決める“2枚目”が本番だ。もはや儀式となりつつある『2枚の集合写真』を、このメンバーであと何回撮れるだろうか。これから移り変わっていく季節の風景を、どれだけ記憶の中に刻み込めるだろうか。

 村雲は2度のミラクルを経験した今、覚悟が決まったように見えた。「もう残り数か月なので、とにかくコイツらとバカみたいに笑って、とにかく駿台らしく、大森先生も応援席もみんなが盛り上がれるようなサッカーをやりたいです。上の代は凄かったですけど、もうそういうことは気にせず、自分たちで楽しみたいなって。でも、勝たなければ楽しくはないので、勝つためにとにかく考えて、とにかく動いて、自分たちの長所を生かして、自分たちの好きなサッカーを楽しむことを、残りの時間で突き詰めていきたいです」。そう言い終えて少しだけ漏らした小さなため息が、不思議と印象に残っている。

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