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『SEVENDAYS FOOTBALLDAY』:32番のラストステージ(日本大・千葉武)

ゲキサカ / 2023年12月10日 8時24分

 そのメンバー入りは、意外とあっさり伝えられたという。「スタッフから『追加登録したから、頑張って』と言われました(笑)」。だが、もちろんこの抜擢を意気に感じないはずがない。自分のために、社会人チームでともに戦ってきた仲間のために、確かな覚悟を携えて、32番を託された4年生は大学最後の大会を迎えていたのだ。

「メンバーに入ったからには出たかったですし、出たからには結果を残したいなと思っていました。不思議と緊張はあまりなくて、『サッカーをやりたいな』という想いでずっとアップもしていたので、嬉しいという気持ちが大きかったです」。インカレの1回戦。高松大を相手に3点をリードしていた後半25分。千葉が少し陽の傾き始めたピッチへと駆け出していく。

 受けて、捌く。ボールを持ったら、前へ、前へ。「まだまだレベル感的なところも自分には見合っていない感じもあるんですけど、自分の100パーセントのプレーは出し切ったので、もう少し周囲の質やレベルやスピード感に付いていけるようになると、チームにもっともっと貢献できるようになれるのかなと思いましたね」。中盤に位置しながら、改めてトップチームのレベルを感じつつ、ゆっくりと自分をゲームに溶け込ませていく。

 それはまさかの“指名”だった。36分。日本大がPKを獲得すると、ベンチから「ベガ!ベガ!」と千葉がキッカーを務めるように指示が飛ぶ。「PKなんてまったく考えていなかったです。キャプテンのナツ(阿部夏己)が蹴ると思ったんですけど、スタッフが『行け』と(笑)。メッチャ緊張しました。これまでにないぐらい緊張したんですけど、もう思い切って蹴るだけでしたね」。



 32番がスポットに立つ。1つ、深呼吸。腹をくくって蹴り込んだのは、向かって左。GKも同じ方向へ飛んだものの、ボールは確実にゴールネットを揺らす。それは4年目にして、千葉がトップチームで挙げた初めての得点だった。

 キッカーを務めそこなったキャプテンのDF阿部夏己(4年=徳島市立高)は「最初は僕が蹴る感じだったんですけど(笑)、ベンチの声もあってみんなも『ベガ、行こう!』みたいになったので、しっかり落ち着いて決めてくれて良かったです」と笑いながら、千葉がチーム全体に与える影響について、こう話している。

「千葉はこれまで社会人チームでキャプテンを務めてくれて、どうしても学生スポーツはトップチーム以外に温度差が出てくる中で、彼がずっとそういう温度差が出てしまいそうな子を盛り上げて、律してやってくれていたので、彼の存在がなければ自分たちの結果も出ていないでしょうし、社会人チームも優勝と昇格を成し遂げてくれた中で、千葉がチーム全体にプラスとなる働きをしてくれていたので、そういう意味ではこれからもトップチームではないカテゴリーに所属することになる選手に対して、『最後までやり続ければ、こうやって最後の大会で結果を残せるんだ』ということを示したことにもなりますし、本当に大きな1点だったと思います」。この言葉を紡げるキャプテンの人間性にも、日本大サッカー部の在り方が見え隠れする。

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