『SEVENDAYS FOOTBALLDAY』:5人目の交代(浦和レッズユース・吉澤匠真)
ゲキサカ / 2024年7月25日 7時35分
今までは基本的にスタメンで試合に出ることが多かったが、立場が変わったことで新たな発見もあった。「昔から『ベンチにいる時は誰よりも声を出してやろう』と思っていましたけど、ピッチ内の選手はボールのところに関わる声は出してくれているので、少しボールに関係はないけれど、そこに関わりが持てそうな選手のこととか、些細なところはベンチからの方がより見えているのかなと思うので、そこは自分から声が出せるかなって」。ただ声を出すだけではなく、ピッチの選手の助けになるようなアドバイスも、以前よりは確実に送れるようになってきた。
初戦を引き分けているだけに、この日の試合はどうしても勝利が必要な一戦。浦和ユースは前半のうちにFW山根且稔(2年)とFW照内利和(3年)のゴールで2点をリードすると、後半にも照内が追加点を叩き出して3点差に。交代カードも切りながら、勝利への道を着々と前進していく。
ふと気付くと、エメラルドグリーンのユニフォームを纏った選手が、それまで着ていたビブスを脱ぎ、塩田GKコーチと何かを話している。そこまでに途中出場でピッチに解き放たれた選手は4人。交代枠はあと1つ残っていた。チームを率いる平川忠亮監督が、そっと教えてくれる。「塩田が『5枚目はキーパーを使ってもらえませんか?』と提案してくれたんです」。
塩田GKコーチと吉澤は交代直前に話し込む
その言葉を塩田GKコーチが引き取る。「4人交代した後に『5人目どうする?』という話になったので、『吉澤はどうですか?』という話をしたら、ヒラさんが『いいじゃん、みんな使おうよ』と。3年生は最後の夏だから全員連れていきたいし、全員試合に出してあげたいと思っていた中で、勝負にこだわる部分もあるので、タイミングは難しかったですけど、ここは出してあげられるチャンスなんじゃないかなと思って、ヒラさんに言ったらすぐに『いいじゃん!』と言ってくれたので、こっちも『え?本当にいいんですか?』って(笑)。ヒラさんは『逆に言ってくれてありがとう』ぐらいの感じでしたね」。
不思議と気持ちは落ち着いていた。「塩田さんからは『気負う必要はないから、まずはこの最高の舞台を楽しむことだ』と言われました。緊張はしなかったですね」。ピッチサイドに出てきた第4の審判員が、小森の番号を意味する数字を掲示する。下がってきた25番と笑顔で少しだけハグを交わし、吉澤はレッズのゴールマウスへと全速力で駆け出していく。
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