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認知症の患者がたばこを吸っても大丈夫でしょうか?

日刊ゲンダイ ヘルスケア / 2024年4月1日 9時26分

【介護の不安は解消できる】

 認知症の親に「たばこ」をやめてもらいたい──。そう考えるご家族は多いのではないでしょうか。たばこは、大量飲酒するほど認知機能の低下速度を速めるアルコールと異なり、認知症とは直接的な関係はないとされています。ですが、たばこには有害物質が多く含まれ、肺がんや呼吸器疾患などさまざまな健康被害を引き起こします。

 長年、喫煙習慣があるとこういった病気のリスクは高まり、偶然受けた健康診断で慢性閉塞性肺疾患(COPD)が見つかるケースも少なくない。放置すると、がんにつながりやすく、通常の人であれば禁煙を検討するでしょう。一方、認知症の進行した方の場合、いくら医師や家族からたばこの危険性について説明を受けても理解するのが難しいので、自発的に禁煙に取り組む人は極めて少ないのです。

 ある70歳代後半の男性は、アルツハイマー型認知症を発症してから全く外出せず、自宅で過ごしていました。次第に一日に吸うたばこの本数が増え、同居する家族が健康面を心配し、現在手元にある本数を吸い終わったら禁煙してもらおうと、ストック分を購入しなかったそうです。すると、本人は家中にあるお金を集めてたばこを買いに1人で外出したといいます。

 このようにたばこに含まれるニコチンはアルコールよりも依存性が高く、認知症を発症して記憶力が低下しても喫煙欲求は薄れません。

 さらに、禁煙してもらおうと本人からたばこを取り上げて吸えない状況になると、ニコチンの離脱症状からイライラして怒りっぽくなり、攻撃的になりやすい。暴れると本人も家族もケガをする恐れもあります。

本人が吸って穏やかに過ごせるのであれば…

 中でも注意したいのが「隠れ吸い」です。ご家族が本人に対して過度に禁煙を求めるあまり、たばこを吸ったらとがめられるのではないかと、これまでベランダや換気扇の下で吸っていた人も、自室で隠れて吸うようになります。認知症によって注意力が低下すると、火を消し忘れて火事につながる危険があります。

 たばこは百害あって一利なしといわれていますが、本人が吸って穏やかに過ごせるのであれば、認知症の方に無理に禁煙させるのではなく、ご家族から渡して徐々に本数を減らしていくのがよいかと思います。

▽井関栄三(いせき・えいぞう) 1979年新潟大学医学部卒業後、同大学大学院進学。84年横浜市立大学医学部精神医学教室入局、2010年順天堂大学医学部精神医学教授を務めたのち、16年シニアメンタルクリニック日本橋人形町を開院し、院長を務める。

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