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「変形性膝関節症」痛みを抑える新たなメカニズムがわかった

日刊ゲンダイ ヘルスケア / 2024年4月6日 9時26分

 膝が痛くて歩けない。膝の曲げ伸ばしがしづらい──。「変形性膝関節症」は60歳以上の女性の約半数、80歳以上では約8割が発症し、国内の患者数は2500万人と推定されている。消炎鎮痛薬や患部への注入療法など治療法はさまざまだが、副作用の報告も少なくない。そんな中、変形性膝関節症の痛みを抑える新たなメカニズムが発見され、新薬の開発が期待されている。研究を行った広島大学大学院医系科学研究科教授の森岡徳光氏に聞いた。

 変形性膝関節症は、関節のクッションの役割を担う軟骨がすり減り、炎症を起こして痛みが生じる病気だ。加齢や遺伝、筋力低下のほか膝に負荷がかかるスポーツなどによって軟骨が摩耗されると、痛みや腫れ、関節のこわばりや変形が生じて、日常生活に支障を来しQOL(生活の質)を低下させる。

 治療は、運動療法や薬物療法といった保存療法が基本だ。

「膝の痛みに対しては、ロキソニンなどの『非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)』が効果的とされる一方で、長期間服用すると胃腸障害だけでなく、逆に軟骨が摩耗して膝痛を悪化させるといった報告があります。また、炎症や痛みがひどい場合に使用されるステロイド注射も、骨粗しょう症を引き起こすリスクがあり、頻回な投与は控える必要があります」

 保存療法で症状の改善が見られない場合に適応される人工関節置換術は、痛みを安全に取り除いてQOLを改善させる効果が高いとされているが、約3割は手術を受けても痛みが残るといわれている。このような背景から、新たな治療薬や治療法の開発が求められている。

■新薬開発の第一歩

 そんな中、森岡氏らの研究で、変形性膝関節症の痛みを和らげる治療薬として期待できる“標的”が発見されたという。

「以前から行ってきた研究で、原因がそれぞれ異なる慢性痛を持つマウスに対して、細胞の中(核内)にある受容体のひとつである『REV-ERB』を薬物で刺激すると、慢性痛を改善することが分かっていました。そこで今回、変形性膝関節症を発症したマウスの膝関節内にREV-ERB刺激薬を投与したところ、偽薬を投与したマウスのグループと比較して痛みが緩和されると分かりました」

 また、大腿骨にある軟骨組織の厚さを測定したところ、軟骨のすり減りも抑えられていた。さらに、ラットの膝関節内の軟骨組織をつくる軟骨細胞を培養し、人為的に炎症を生じさせて痛みのもととなる炎症物質が増加するのを確認し、そこにREV-ERB刺激薬を投与すると、炎症物質の増加が抑制されたという。

「先述したように、既存の治療法として広く用いられているNSAIDsのような消炎鎮痛薬は軟骨がすり減る副作用があり、生涯にわたって服用するのはリスクが伴います。今回の研究から、REV-ERBを刺激する方法は人間に対しても既存の治療法とは異なった効果を示せるのではないかと考えています」

 今後はさらなるREV-ERBによる鎮痛効果のメカニズムを明らかにし、安定性の高いREV-ERB刺激薬の開発を進めるという。

「今回はあくまでも基礎研究の段階なので、実用化のめどは立っていませんが、変形性膝関節症の痛みで悩んでいる方に少しでも貢献できるよう、新薬の“タネ”になる物質を研究で発見できればと思っています。今後はヒトの軟骨細胞など、臨床応用に関する研究も進めていく予定です」

 実用化に期待したい。

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