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優等生が一転、20年超のひきこもりに…「親」の視点【「不登校」「ひきこもり」を考える #5】

日刊ゲンダイ ヘルスケア / 2024年5月4日 9時26分

【「不登校」「ひきこもり」を考える】#5

 みなさんは前回のケースを見てどのように感じられるでしょうか? たしかに、親御さんにはもちろん、担当の医師にも「もう少し違った対応をしてもらえたら、もっと違った結果につなげられたのではないか」とも思われるでしょうか?

 それとも、「この程度のやりとりは誰でも多かれ少なかれ経験するようなことだし、もっと言うならばこんなものでは済まないつらい過去を乗り越えて自分は今がんばっている。何を甘ったれたことを言っているのか」と反論される方もおられるかもしれません。

 現にこちらのご両親にも、一度同様のお話をさせていただいた際に、当初は「先生は全部親のせいで、今もいい年して毎日ゲーム三昧で親の脛をかじり続けている甘ったれた息子を、これ以上まだ甘やかせというのですか?」「弟は同じように育てたつもりですが、今ではAとは違ってちゃんと立派に自立し、家庭だって持っているのですよ」と激しく反発されたのでした。読者諸兄の中にも同じ意見をお持ちの方は多いのではないでしょうか?

■親の意識改革なしには自力で立ち上がれない子どもたち

 しかし、あえて言うならば、こういった対応こそがお子さんの「感情不全」を生じ悪化させてしまう元凶そのものなのです。もちろん、その程度が軽ければ、時にこういった大人から浴びせられた言葉への反発を糧にして、自らの力で立ち上がる“強さ”を持ち合わせたお子さんがおられるのは事実です。

 その一方で、そこに親の意識改革と支えがなければ何歳になってもどうしても自らの力では立ち上がれない、“強さ”を持ち得ないお子さんも数多おられるということをぜひ、ご理解いただきたいのです。そこには間違いなく後述する感情不全が生じています。また、たとえ“強さ”を持ち合わせ、不登校やひきこもりにはならずに、一人前に育てあげたと親は思っていても、その中には内心は傷つき親との関わりを煙たがっているお子さんも数多おられます。

 孫が欲しいなどとのんきに思っている親を尻目に、自らの抱く家庭像や親子像のネガティブさから結婚や子育てにどうしてもポジティブなイメージや幸福感が持てず、それどころか嫌悪感すら抱いている方や、どことなく生きづらさが拭えずに、中には心を病んで親の預かり知らぬところで精神科に通院し続けているという方も少なくないのです。

 これは今や手遅れとなった感が否めない「非婚化・少子化問題」の本質そのものと言っても過言ではないと私は思っています。そう、すべてに感情不全が関係するのです。(つづく)

▽最上悠(もがみ・ゆう)精神科医、医学博士。うつ、不安、依存症などに多くの臨床経験を持つ。英国NHS家族療法の日本初の公認指導者資格取得者で、PTSDから高血圧にまで実証される「感情日記」提唱者として知られる。著書に「8050親の『傾聴』が子供を救う」(マキノ出版)「日記を書くと血圧が下がる 体と心が健康になる『感情日記』のつけ方」(CCCメディアハウス)などがある。

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